おれは権現
(おれはごんげん)
(しばりょうたろう)
[短編]
★★★☆☆☆
♪フジテレビの正月時代劇の放映の話を聞いたとき、司馬遼太郎さんに『けろり道頓』という作品があったかなあ、と首をひねった。念のために、書店で本を調べたが見つけられなかった。『司馬遼太郎全作品事典』(新人物往来社)によると、『おれは権現』と『最後の伊賀者』(講談社文庫)に収録されていることがわかり、Get!した。
読みはじめてみて、テレビ関係者は、よくドラマ化したと思った。この作品集自体、肩の力が抜けていて、軽妙洒脱で不思議な明るさを持っている。古き良き時代小説って感じがしてうれしい。
物語●「愛染明王」十四歳のとき、市松は、尾張清洲城下で、泥酔した足軽を庖丁で殺した… 。「おれは権現」福島正則の家中に、可児才蔵という豪傑がいた。彼には奇癖があった…。「助兵衛物語」宇喜多家の侍大将・花房助兵衛は、小田原討伐の際に、早雲寺で出雲の歩き巫女を助けた…。「覚兵衛物語」肥後加藤家の老臣飯田覚兵衛は、孫ほどに幼い妾をもつことになった…。「若江堤の霧」薬師寺閑斎のもとに、秀頼の家宰大野修理治長の使者があった…。「信九郎物語」百姓の孫・信九郎は十六歳のときに、三人の武士の手によって元服した…。「けろり道頓」関白秀吉は、大坂・天満の青物市を見物していた。そこで、彼が見たものは…。
目次■愛染明王|おれは権現|助兵衛物語|覚兵衛物語|若江堤の霧|信九郎物語|けろり道頓|小説のうまさ 津本陽|年譜