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喬四郎 孤剣ノ望郷 目に見えぬ敵

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喬四郎 孤剣ノ望郷 目に見えぬ敵喬四郎 孤剣ノ望郷 目に見えぬ敵
(きょうしろうこけんのぼうきょう めにみえぬてき)
八木忠純
(やぎただすみ)
[痛快]
★★★☆☆☆

「喬四郎 孤剣ノ望郷」シリーズの第5作目。この「喬四郎 孤剣ノ望郷」は、表紙カバーの宇野信哉さんのイラストのイメージとあわさって、佐藤雅美さんの「町医北村宗哲」シリーズを想起させる。

主人公の有馬喬四郎は、父を国家老の東条兵庫に殺され、悪政を正すために江戸に潜んで半年あまり。良くも悪くも上士の子らしく、育ちの良さというか、人の良さというか、お金に恬淡としたところが出てしまう。江戸に出て、淫売宿同然の料理茶屋の用心棒を手始めに実にいろいろな仕事をして、稼ぎに恵まれながら、お金が入ると右から左にするりと消えてしまう。

いつになったら、国に戻って宿敵の東条兵庫を倒せるのか、歯がゆくなるところ。

時折物語に織り交ぜられる、著者の江戸に関する知識が楽しい。今回は、和算のバイブルである『塵劫記』について詳しく触れている。その中で、三章のタイトルにも使われている、“盗人算”が興味深かった。

物語中では、藤岡屋由蔵を想起させる、“お記録本屋”の由蔵が登場し、六年前(文政六年四月)に発生した松平外記の刃傷事件に関する書類を、喬四郎に売っている。著者の歴史好きぶりが垣間見られる。

主な登場人物◆
有馬喬四郎:摂州上和田藩を脱藩した浪人。またの名を花岡徳之進
白石忠左衛門:上和田藩江戸家老
東条織部:東条家分家の当主
三浦蟷堂:神田新和泉町の手習塾、友朋堂の師匠
杉村勘九郎:蟷堂の元教え子(手習い子)
玉村たき:友朋堂の女座の師匠
孫左衛門:一番組頭取
甚助:孫左衛門の息子で、友朋堂の手習い子
トミ:友朋堂の手習い子
千太:友朋堂の手習い子
上州熊五郎:六尺(駕籠舁き)仲間の顔役
咲:喬四郎が最期を看取った浪人平田靱負の娘
万屋源七:蜘蛛の巣店の万請負師
五郎八:元巾着剪りで木挽職人
塩川竜之助:元御家人で居酒屋福太郎の常連
財部伝之丞:竜之助の仲間
しの:橘町の長屋に住む芸者
くめ:柳橋の芸者
山形十兵衛:直心影流の道場主

物語●国家老東条兵庫の悪政を正すため、江戸に潜んで半年。有馬喬四郎は決断を迫られていた。手習い塾友朋堂の代教の仕事を引き受けるか、駕籠舁きの仕事を続けて八両の金が出来たらすぐに摂州上和田に戻って兵庫を討ち果たすか。また、長屋に転がり込んできた美貌の娘・咲と所帯を持つべきか、の決断にも迫られていた。宿願を果たすためには、仕事も家庭も諦めなければならない。その間にも、宿敵兵庫の手先が卑劣な手段を講じて迫ってくる…。

目次■一、獅子鼻男の店/二、寄り添う影/三、盗人算の盗人/四、闇夜に光る目/五、誤解/六、復縁の神

装画:宇野信哉
装丁:関口信介
時代:文政十二年七月
場所:蜘蛛の巣店(高砂町)、新和泉町、橘町、杉森稲荷、矢ノ倉、西ノ窪、柳橋、下谷御徒町、柳原土手、米沢町二丁目、神田松永町、筋違御門外、元鳥越寿松院、日本橋浮世小路ほか
(文藝春秋・文春文庫・619円・2011/08/10・285P)
購入日:2011/10/18
読破日:2011/11/06

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