2023年時代小説SHOWベスト10、発表!

汚名

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汚名
汚名
(おめい)
杉本苑子
(すぎもとそのこ)
[政争]
★★★★

永井路子さんとこの人の作品は、ずっと読みたいと思っていた。ようやく読む機会に恵まれた。期待に違わず、丹念に書かれたオーソドックスな時代小説って感じ。

羽太雄平さんの『本多の狐』(講談社文庫)などの影響で、本多正純については、奸臣というマイナスのイメージは持っていなかったので、スッと胸に落ちる心地いい作品だった。しかし、この本が書かれるまでは、本多正純というと、謀臣、野心家、奸臣という悪役のイメージ一色と思われるだけに、この作品の価値は高いと思う。実はこの本を読もうと思ったのも、『本多の狐』の解説で杉本さんの本について触れられていたせいだ。
本多正純の感情が表されることなく、正純の不正、罪科を探る隠密の眼から描かれているのも面白い。

本多正純の失脚を扱った作品としては、時代小説大賞を受賞した『水の砦』(大久保智弘著・講談社文庫)が思い出される。

物語●家康に重用されて、幕府草創期にらつ腕を揮った能吏本多上野介正純。家康が亡くなり、二代秀忠の世になり、下野小山三万三千石から宇都宮十五万石五千石に国替えになった…。正純に怨みを抱く、古河・奥平家の加納御前(家康の長女)と堀伊賀守利重は、隠密を宇都宮に派遣することにした。堀利重の近侍の若侍・越ヶ谷謙作は、賄方の小者として宇都宮城に潜入した…。

目次■諜者ふたり/大久保事件/たけのこ/穴の中の女/はぐれ蛍/沼のほとり/伊賀組与力/成敗/若ぎみ姫ぎみ/念五郎地蔵/正月の客/お成り御殿/裏切り/土偶/肩すかし/暗転/走狗烹らる/みちのくへの道/あとがき/解説 縄田一男

カバー装画:粟屋充
解説:縄田一男
時代:元和七年(1621)
場所:宇都宮、古河
(講談社文庫・583円・95/09/15第1刷・360P)
購入日:97/08/03
読破日:99/03/22

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