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重蔵始末

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重蔵始末重蔵始末
(じゅうぞうしまつ)
逢坂剛
(おうさかごう)
[捕物]
★★★★

『カディスの赤い星』などで知られる直木賞作家・逢坂さんの時代小説。間宮林蔵、最上徳内と並ぶ蝦夷地探検家、近藤重蔵に着目したところが面白い。

火盗改の本役・鬼平こと長谷川平蔵宣以(のぶため)が、石川島人足寄場取扱を兼任して忙しくなったことから、御先手鉄砲組の組頭松平左金吾定寅(さだとら)が、加役として火付盗賊改方任ぜられた。その与力職に、近藤重蔵がつく。松平左金吾というと、鬼平の引き立て役として見られることが多いだけに、この物語での描かれ方は興味深い。

主人公の近藤重蔵は次のように描写されている。

「二十一歳という若さながら、引き締まった巨体と、いつも青あおとした月代や髭の剃りあとから、年長に見え、切れ長の目と鋭い眼光、固く引き結ばれた遺志の強そうな口元にも、大人の風格を感じさせた。幼時から神童と呼ばれ、儒学の鬼才山本北山の学舎に学んだ重蔵は、十七歳で自ら〈白山義学〉を興すなど、並なみならぬ学識の持ち主だった。その上、重蔵には、年長者どころか上級の役職者に対しても物怖じしない、天性をの豪胆さが備わっている。」(p.15)

身の丈六尺近くの巨体で、脇差も十手も持たず、ニ尺三寸ほどの赤い鞭を差して悪党に立ち向かうところが颯爽としている。

主人公を実在の人物に置いているせいか、架空の人物である、若党・根岸団平と同心・橋場余一郎を手下として配することで、物語に自在性とダイナミズムを生んでいる。

物語●「赤い鞭」本所回向院で、雷電と鬼ヶ嶽の取組を見ていた〈水窪の黒猿〉と呼ばれる小男を、火付盗賊改方与力近藤重蔵の若党・根岸団平が見張っていた…。「北方の鬼」火付盗賊改方同心橋場余一郎と根岸団平は、小日向村の竹林で、頭蓋の骨が折られた殺されている男の死体をみた…。「七化け八右衛門」神田上水の白堀沿いで、根岸団平は、手に菜っ切り包丁を握った侍ともみ合っている若い女を助けた…。「茄子と瓜」根岸団平は、青松寺門前町の料理茶屋で、腹ごしらえをしている時、御家人風の若侍と、若衆作りの女という、ちぐはぐな組み合わせの二人が酒を飲んでいるいるのを見かけた…。「猫首」〈葵小僧〉という、大胆不敵な怪盗の一味が跋扈する中、奇妙な盗難事件が三件あった…。

目次■第一話 赤い鞭|第二話 北方の鬼|第三話 七化け八右衛門|第四話 茄子と瓜|第五話 猫首

装画・挿絵:中一弥
装幀:多田和博
時代:寛政二年(1790)
場所:本所回向院、神田明神、源助町、赤城明神の門前町、牛込水道町、和泉橋、日本橋蠣殻町、神田上水の白堀、本郷三念寺門前、神田松永町、切支丹屋敷、宗仙寺、青松寺、飛鳥山、真性寺門前ほか
(講談社・1,700円・01/06/29第1刷・301P)
購入日:01/07/07
読破日:01/09/04

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