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昨日の恋 爽太捕物帖

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昨日の恋 爽太捕物帖昨日の恋 爽太捕物帖
(きのうのこい・そうたとりものちょう)
北原亞以子
(きたはらあいこ)
[捕物]
★★★★
[再読]

久しぶりに、「爽太捕物帖」シリーズの最新刊『消えた人達』が刊行されたのを機に、3年半ぶりに読み直した。はじめて読んだときは★★★☆だったが、今回は★★★★。おすすめ度の表示がいい加減といえばそれまでだが…。初めて読んだときは本格捕物帳を期待したせいか、謎解きの部分がほとんどなくて拍子抜けだったが、今回は良質の市井物として堪能できた。捕物小説の醍醐味というのは、謎解きばかりでなく、江戸の風物や季節感、人情などの描写も欠かせないということに、遅れ馳せながら気づいた次第だ。

主人公の爽太は、芝露月町にある鰻屋「十三川(とみかわ)」の入り婿。文化三年の大火事で孤児となり、「十三川」の主人・十兵衛に引き取られ、いっしょに育った彼の娘・おふくと結婚し、今は二人の娘の父。同心の朝田主馬に十手を預けられる。鰻屋の若旦那になるわけだが、鰻が苦手で素手で掴めず、家業で手伝えることは皿洗いに出前、娘の子守りというのが何ともいい設定だ。

そんな爽太に持ちこまれるのが、心に傷を負った男や女が引き起こす事件だった…。

物語●「おろくの恋」芝露月町の質店の女主人おろくが鍵のかかった蔵の中で殺されていた…。「雲間の出来事」妓夫太郎の徳松は、満月の柳原土手で匕首を握りしめ、返り血を浴びながら逃げていく男を見た…。「残り火」醜い容貌ながら金に目のくらんだ男たちを手玉にとるおしかと、結婚詐欺を繰り返す男が出会った…。「終りのない階段」おつやは着物を買いに行く友だちのおあきに付き合って、古着屋へ行った…。「頬の傷」志津と喧嘩して又七は出ていったが、後に残された志津は頬から血を流していた…。「昨日の恋」佐平次は、十五年前に大喧嘩して別れた女房にこれから会おうと江戸に戻ってきた…。「師走の風」日比谷稲荷で子守りをしていた爽太は、見ず知らずの女から赤ん坊を預かったが…。

目次■おろくの恋|雲間の出来事|残り火|終りのない階段|頬の傷|昨日の恋|師走の風|解説 細谷正充

カバー:蓬田やすひろ
解説:細谷正充
時代:文政六年(1823)
場所:「おろくの恋」芝露月町、「雲間の出来事」柳原堤、本所吉田町、「残り火」芝口、「終りのない階段」日陰町、「頬の傷」伏見町、「昨日の恋」上野不忍池の中島、川崎、「師走の風」日比谷稲荷ほか
(文春文庫・467円・99/04/10第1刷・233P)
購入日:99/04/11
読破日:00/01/12

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