手鎖心中

手鎖心中

手鎖心中

(てぐさりしんじゅう)

井上ひさし

(いのうえひさし)
[市井]
★★★★☆[再読]

杉本章子さんの『写楽まぼろし』を読んでから、蔦屋重三郎が気になり、中学生の頃、読んだ本書を読み返したくなった。しかし、入手に手間取った、品薄状態らしい。購入できた本も1986年の第15刷のものだった。一体どうなってんのかなあ、井上さんの時代小説デビュー作で、直木賞もとった作品なのに…。最新刊紹介にあった、有明夏夫さんの『幕末早春賦』も面白そう。今度、探してみよう。

蔦重は、登場シーンが少なかったが、若き日の曲亭馬琴、十返舎一九、式亭三馬をはじめ、同時代の文化人が勢揃いする京伝の煙曲会のシーンは見ものだ。猫荘兵衛の煙曲芸が凄い。

再読してみて意外だったのは、初読時に感動した「手鎖心中」よりも併載の「江戸の夕立ち」の方が面白く感じられた。両作品とも、上質な現代の戯作になっている。

杉浦日向子さんの指摘ではないが、江戸の若旦那という人種は、いいなあ。羨ましいよ、って感じさせる2編だ。

物語●「手鎖心中」材木問屋の若旦那栄次郎は、他人を笑わせ、他人に笑われ、それにちょっぴり奉られもしたいために死ぬほど戯作者になりたいと思っている…。
「江戸の夕立ち」薬種問屋の若旦那清之助と吉原のたいこ持ち桃八は、品川へ遊びに行って、事件に巻き込まれる…。

目次■手鎖心中/江戸の夕立ち/解説

カバー:安彦勝博
解説:百目鬼恭三郎
時代:「手鎖心中」寛政六年十月、「江戸の夕立ち」安政六年九月
(文春文庫・350円・75/3/25発行)
購入日:97/5/24
読破日:97/6/8

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