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蝦夷の蜂起、元慶の乱を描く、高橋克彦さんの東北歴史小説

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水壁 アテルイを継ぐ男高橋克彦さんの歴史時代小説、『水壁(すいへき) アテルイを継ぐ男』がPHP研究所から刊行されました。

九世紀後半の東北地方。出羽や陸奥に国府が置かれ、朝廷から派遣された国守が統括していた。俘囚と呼ばれ、かの地に暮らす民のほとんどは、もともと蝦夷(えみし)だった者で、朝廷に帰順して田畑を耕し、年貢を納めていた。
二年ごとに繰り返される飢饉と大地震や津波などの天災の影響と、容赦ない中央政権の仕打ちに、俘囚たちは、存亡の危機を迎えていた。
窮する民を見かねて、東北の英雄阿弖流為(アテルイ)の血を引く若者・天日子(そらひこ)が決起する……。

本書は、『風の陣』『火怨(かえん)』『炎立つ(ほむらたつ)』『天を衝く』と、東北を舞台とした、歴史時代小説を描いてきた著者の集大成ともいうべき作品。
これまでの作品と同じように、勝者の視点で綴られた正史とは異なり、敗者となり歴史に抹消された蝦夷の側から描かれています。

本書で取り上げられているのは、元慶の乱(がんぎょうのらん、878~879)です。ところが、物語を読むまで、朝廷の苛政に対して出羽国の俘囚(蝦夷)が蜂起して秋田城を襲ったと記される、この反乱のことを全く知りませんでした。

著者は、執筆の難しさとそれでも書かずにいられなかった動機を『文蔵 2017.4』の中で、次のように述べています。

(前略)陸奥を舞台とする抗争の中で、恐らく唯一蝦夷が勝利をもぎ取った戦いであろうと思われるのに、正史にはなぜ蝦夷が立ち上がったのか、戦の展開がどうであったか、最も肝心な蝦夷の主導者がだれなのか、すべて脇に遠ざけているのだ。
 書くには少ない記録の背後をこちらで大きく膨らませ、登場人物も架空の存在としなくてはならない。それで歴史を描くことになるのか。無理、と諦めていたのはそうした理由であった。(中略)
 今になって「書く」と心が固まったのは、やはり私の年齢が大きい。これを書かずして終えては蝦夷の頑張りに対して申し訳が立たないとう気がしたのだ。(後略)
(『文蔵 2017.4』P.7より)

天日子率いる蝦夷と朝廷軍の戦闘シーン、スペクタクルなストーリー展開、個性派ぞろいの登場人物、一気読みさせる面白さがあります。
物語で描かれている時代の東北が、東日本大震災後復興が進まない現在の東北とオーバーラップしてきて、作中の蝦夷の活躍ぶりが東北人へのエールのように思われてきます。

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『水壁 アテルイを継ぐ男』
『文蔵 2017.4』