『傑作! 名手たちが描いた 小説・鎌倉殿の世界』の解題を担当しました。

双眼

[amazon_image id=”4062096374″ link=”true” target=”_blank” size=”medium” ]双眼[/amazon_image]
双眼

(そうがん)

多田容子

(ただようこ)
[剣豪]
★★★★

最近、女性作家の活躍ぶりに瞠目している。その中で、とくに気になっているのが諸田玲子さんと多田容子さんである。なかなかきっかけが掴めずにお二人の著作を読む機会を逸してきたからだ。この作品は、作者名とタイトルのせいかなかなか時代小説・歴史小説コーナーにちゃんと置かれていることが少ない。実は半年あまりも探してやっと見つけたのである。
剣豪小説のメインストリームである、柳生十兵衛にチャレンジした心意気に拍手したい。しかも、十兵衛のトレードマークともいうべき、隻眼に着目し、その謎を解き明かしてくれたのはうれしい。

プロフィール(カバーの見返しの写真は凛としていてかっこいい)によると、多田さんは、京都大学経済学部在学中に時代小説大賞に応募し、結構いい線まで行っていたらしい。本作がデビュー作だが、柳生新陰流初伝、居合道三段で、手裏剣も打つという。戸部新十郎さんや津本陽さん、鳥羽亮さん、佐江衆一さんなど、実際に武芸の嗜みのある方の、チャンバラシーンは魅力的なので、多田さんの今後の作品も期待したい。

物語●柳生十兵衛三厳(みつよし)は、浪人永守大膳の名で東海道を上っていた。薩摩藩主島津家久は、十兵衛に城下を探られることを恐れて、示現流の開祖・東郷藤兵衛重位(しげたか)門下の百人組と呼ばれる刺客を放った。しかし、そのうちの三十九人がことごとく十兵衛に倒された…。十兵衛に下された将軍家の内意は、「極西の国へ赴きて、公儀を欺き貿易の利をむさぼる曲者を見極むるべし―」
昨年、大御所秀忠が死去し、三代将軍家光の親政が、名実ともに幕を開けた。家光は、生まれながらに諸侯の上に立つ将軍であり、由緒ある外様の大藩といえども、臣下として遠慮なく裁いた。同時に、キリシタンへの対処も厳しさを増していた。そうした矢先に、朝鮮貿易に関わる、ある事件が持ち上がった…。

目次■序之段/第一章 兵法者/第二章 二つ目遣い/第三章 夜襲/第四章 鬼捕り/第五章 敵/第六章 密命/第七章 父子/第八章 柳生谷

装幀:芦澤泰偉
時代:寛永十年(1633)
場所:鶴丸城、尼崎、江戸城、安芸国広島、長州赤間関、佐賀ほか。
(講談社・1,800円・99/05/20第1刷・272P)
入手日:99/12/30
読破日:00/04/23

Amazon.co.jpで購入 [文庫あり]