遭敵海域

遭敵海域

(そうてきかいいき)

C・W・ニコル

(にこる)
[大正]
★★★★

原題:When Two Strong Men

『勇魚』『盟約』と続くサーガノベル。江戸末期から明治にかけて、狭い日本を飛び出してグローバルに活躍した、ある一家の大河ドラマ。今回は時代小説というよりは第一次世界大戦を描いた戦記ものといった趣きがある。

第一次世界大戦直前から勃発までを描いた戦争小説である。紀州太地の鯨捕りの若者甚助の活躍を描いた海洋時代小説の傑作『勇魚〈上〉』からの流れで、読み続けているが、時代は大正に入り、時代小説の範疇に入れるのは難しくなった。

今まで知る機会がなくて、日本が第一次世界大戦にどのように関与したかについてわからなかったので、この物語を読んで、少し時代感覚がつかめた気がする。しかも、日本だけでなく、カナダ、イギリス、シンガポールとワールドワイドに、主人公の海軍士官銛一三郎(甚助の三男)が活躍し、スケールがより大きなものになっている。

翻訳者の村上博基さんは、映画化するとしたら、主役の三郎には織田裕二さんがいいということを書かれていたが、伊藤英明さんか坂口憲二さんの方が原作のイメージによりピッタリだと思う。

この作品の文庫化と同時に、続編の『特務艦隊』が刊行された。日本艦隊が地中海でドイツのUボートと対決するシーンが描かれているようで、興味深い。文庫化まで待って(ちょっとせこいが)ぜひ読みたいと思う。

物語●強力新鋭巡洋戦艦金剛の建造をめぐって、海軍上層部と、受注者のドイツのシーメンス社およびイギリスのヴィッカース社の間に、破廉恥きわまる癒着が発覚した。このシーメンス事件と呼ばれるスキャンダルの影響で、海軍少佐銛一三郎(もりいちさぶろう)の上司で海軍情報部の藤井大佐は事件に無関係ながら姿を忽然と消した。三郎は、すべての疑惑から解かれて青天白日の身となり、任務に復帰していたが、突然、海軍軍令部へ召喚された…。

目次■なし

訳:村上博基
装画:野中昇
デザイン:坂田政則
時代:大正三年(1914)
場所:海軍省、カナダ・ヴァンクーヴァー、インディアン・アーム、シンガポール、赤坂、帝国ホテル、横須賀、横浜、直江津、イギリス・カーディフ、ロンドン、ハリッジほか
(文春文庫・781円・05/05/10第1刷・425P)
購入日:05/05/16
読破日:05/06/10

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