開陽丸、北へ 徳川海軍の興亡

開陽丸、北へ 徳川海軍の興亡開陽丸、北へ 徳川海軍の興亡
(かいようまる、きたへ・とくがわかいぐんのこうぼう)
安部龍太郎
(あべりゅうたろう)
[幕末]
★★★★

安部さんは、ご贔屓の作家の一人ですが、最近、積ん読状態の本が溜まってどうしようかと思っていました。そんな中で、歴史学者の山室恭子さんから、近々、安部さんと対談する機会がもてそうだというような話を伺いました。お二人の対談を読むことができれば、興味の尽きないところ。で、積ん読の山から、この本を見つけて読み始めることに…。

この作品の主人公は、開陽丸艦長の沢太郎左右衛門。そしてその許婚・南雲富子や盟友・榎本武揚らの幕末・維新を描く。開陽丸は、全長72.8メートル、排水トン数2590トン、補助エンジンに400馬力の蒸気機関を搭載し、最大速力12ノット、片側に13門ずつの大砲を装備した3本増すとのスクリュー式蒸気帆船で、徳川艦隊旗艦。オランダのドルトレヒトで建造されたこの最新鋭艦は、同時期にオランダ留学していた、沢と榎本にとっては、青春の思い出が詰まった船でもあった。作中で効果的に挿入される、開陽丸進水歌を聞くと、この作品の本当の主人公は、この開陽丸のように思われる。

作者は、あとがきで、「これまで明治維新は肯定的に評価されることが多かった。(中略)だが、こうした迷妄は、そろそろ醒まされるべきではないのか? 維新の長所と短所を正しく見極める目を持たなければ、我々が現在直面している問題の解決もおぼつかないのではないか」と、執筆動機を語っている。こうした作者の史観が随所に見られた。昔の教育を受けられた方々にはショックなのではないだろうか。

物語●昭和五十年六月、北海道・江差で、明治元年の箱館戦争の頃に沈んだ開陽丸の引上げ作業が行われた。港のまわりには多くの見物が集まり、その中には八十歳近い老婆・南雲さわの小柄な姿もあった。さわは、子どもの頃、祖母の富子から聞いた話が今でも耳に残っていた。 「江差の沖には、開陽丸という大っきい船が沈んでおってな。それはそれは立派な軍艦だったんだよ」…。

目次■序章 三十ポンドカノン砲/第一章 将軍逃亡/第二章 上野戦争/第三章 艦隊遭難/第四章 さらば開陽/終章 よみがえる伝説/あとがき

装画:西のぼる
装幀:田淵裕一
時代:慶応三年(1867)十二月
場所:江差、大坂・天保山沖、一ツ橋御門外、下谷六軒町、横浜港、上野寛永寺、品川沖、仙台・寒風沢(さぶさわ)港、内浦湾(噴火湾)鷲ノ木沖、箱館ほか
(朝日新聞社・1,500円・99/12/01第1刷・294P)
購入日:99/11/23
読破日:00/08/18

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