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江戸のお白州

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ひゃくめ はり医者安眠夢草紙

江戸のお白州

(えどのおしらす)

山本博文

(やまもとひろふみ)
[江戸入門]

時代小説を読むときに役立ちそうな江戸犯罪裁判事情本。著者があとがきに書いているように、江戸時代の人々の考え方や実際の行動、支配的な観念などを知ろうとする時、よい素材となるのが裁判の判例集(『御仕置裁許帳』、『犯科帳』など)。犯罪を犯す人間は、必ずしも特殊な人々でないが、それに対する判決は、当時の支配者層の考え方や、一般の人たちの受け止め方が如実に表れていて興味深い。

この本では、江戸のお白州を、ガイド付きで傍聴できる。史料の原文での引用を最小限に抑え、しかも現代文で書き下しているので、当時の雰囲気をうまく伝えてくれる。また、本文カットを百鬼丸さんが担当されていて、犯罪者をイメージ化しやすかった。

第1話では、森鴎外の小説「最後の一句」の描き方について論評を加えている。辻番で売春があった話や、旗本松平外記の刃傷事件、日向飫肥藩の人買いの話など興味深い事件を扱っている。また、綱吉の生類憐れみの令について触れている章もある。

読みどころ●江戸時代も現代も人間が人間であることに変わりはない。仕出かす愚行も不倫、下半身接待強要、夫殺し、いじめ等々と昔も今も変らない。しかし、それが発覚したあとの刑罰には天と地ほどの差があった。
江戸時代の刑罰の基準とは? 当時の倫理観や社会制度とは? 犯罪と刑罰―法廷である、お白州を通して江戸がわかる一冊。

目次■第1話 お上の慈悲 鴎外はなぜ結末を作り変えたか/第2話 捕物帳の真実 犯人を捕縛出来るのは同心だけ/第3話 吉原の無法な客たち/第4話 息子の密通と母親 人より罪を憎んだ家老たち/第5話 哀しい御徒 庶民同然だった下級武士/第6話 不倫の結末 妻を殺そうとしても放免/第7話 遊女あがりの女房 幸せになったものも多かったが/第8話 売られた妻 「売買価格」はたった十五両/第9話 町人恋愛事情 命がけだった奉公人同士の恋/第10話 女三人連れて出奔 貧乏旗本が雇った若党の素顔/第11話 江戸には来たものの 身元不詳者には厳しかった都会/第12話 主従の恋 待っているのは極刑/第13話 司法の原則/第14話 辻番の掟 売春さえあった「江戸の交番」/第15話 稀代の悪法の真実 「生類憐れみの令」はなんのため/第16話 悲惨な自業自得 実の娘の命を奪われるはめに/第17話 下半身接待 「吉原へ連れていけ」と同心たち/第18話 怖い母娘 「白子屋お熊」は悪女だったのか/第19話 将軍の裁判見学 お褒めにあずかった「遠山の金さん」/第20話 奉公人の倫理 忠義は武士の専売特許ではなかった/第21話 夫殺し 婚礼の翌々日に殺害された夫/第22話 いじめの果て 愚かな旗本たちの退屈しのぎが/第23話 武士の身分は重い ささいなことでも見逃されない/第24話 唐人がらみ 長崎ならではの罪と罰/第25話 人買船 藩士もぐるになった少年誘拐/あとがき/江戸時代元号・西暦対照表(将軍一覧)

装幀:坂田政則
本文カット:百鬼丸
写真提供:明治大学刑事博物館
時代:元文三年(1738)ほか
場所:大坂堀江橋、吉原、会津城下、本八丁堀、田所町、長崎、日向細島ほか
(文春新書・690円・00/09/20第1刷・219P)
購入日:00/09/23
読破日:00/10/07

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