涙堂 琴女癸酉日記

涙堂 琴女癸酉日記涙堂 琴女癸酉日記
(なみだどう・ことじょきゆうにっき)
宇江佐真理
(うえざまり)
[市井]
★★★★☆

タイトルに書かれた「癸酉(きゆう)」は十干と十二支を組み合わせて表記する干支で、「みずのと・とり」のこと60番中10番目を指す。古代の中国の思想で世の中はすべて、「木」「火」「土」「金」「水」の五つからなるという五行説と、すべては「陰」と「陽」に分けられるという陰陽道の思想が結びつき、陰陽五行説が生まれた。十干は、この陰陽五行説に由来する。

「陽」を「兄(え)」、「陰」を「弟(と)」で表し、「木の兄(きのえ)」=「甲(きのえ)」、「木の弟」=「乙(きのと)」と読むようにした。以下、「丙(ひのえ」「丁(ひのと)」「戊(つちのえ)」「己(つちのと)」「庚(かのえ)「辛(かのと)」「壬(みずのえ)」「癸(みずのと)」となる。

十干と十二支(子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥)を組み合わせたものが六十干支で、60年周期で一回りする。ちなみに一回りすることを還暦と呼ぶ。「癸酉」は十番目を指し、物語の中では「文化癸酉」と記されているので、文化十年(1913)が舞台になっている。

作者を連想させる、主婦から作家に転身した主人公琴の目に映った江戸の町。幼なじみや夫のかつての配下だった岡っ引、二人の息子や娘とその夫たちなど、多彩な人間関係がユーモアを交えて描かれている。とくに、琴がかつて恋心を寄せた幼なじみの江場清順の娘・若とその夫・松尾豊成の夫婦喧嘩がアクセントになっている。琴の目を通して日々のできごとを綴りながら、夫の死の真相に迫る捕物タッチの市井小説。

物語●北町奉行所臨時廻り同心だった夫を、何者のかに斬殺された琴は、八丁堀の家を出て通油町で絵師として生活を始めた次男の賀太郎(歌川国賀)と一緒に暮らすことになった。四十五歳の琴は堅苦しい武家の生活から離れて、幼なじみで医師の清順や絵草紙問屋三省堂藤倉屋伝兵衛らと親しみ、江戸の町で目にし耳にする事物を新鮮に感じ、それを日記に書き留めはじめた…。

目次■第一話 白蛇騒動/第二話 近星/第三話 魑魅魍魎/第四話 笑い般若/第五話 土中の鯉/第六話 涙堂/解説 縄田一男

カバー装画:百鬼丸
解説:縄田一男

時代:文化十年二月
場所:通油町、八丁堀、厩新道、新和泉町、大伝馬町、恵比須神社、北町奉行所ほか

(講談社文庫・533円・05/08/15第1刷・314P)
購入日:05/08/17
読破日:05/08/21

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