『傑作! 名手たちが描いた 小説・鎌倉殿の世界』の解題を担当しました。

泣きの銀次

泣きの銀次泣きの銀次
(なきのぎんじ)
宇江佐真理
(うえざまり)
[捕物]
★★★★☆☆

最近、女性作家の活躍が目立つが、時代小説界も例外ではない。作者の宇江佐さんは、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞し、直木賞候補にもなっている。本作は初の書き下ろし長編。

文句なしに面白かった。主人公の銀次の設定がいい。もとは小間物問屋坂本屋の長男だったが、妹が非業の死を遂げてからその犯人を捕まえるために岡っ引きになった変わり種。かつては吉原細見と首っ引きで、遊女の品定めをしていっぱしの通人を気取っていた。脇を固める登場人物もまた、うまく書き込まれている。もと深川の料理屋平清で修業した下っ引きの政吉、銀次を陰日なたなく支える実家の坂本屋の番頭卯之助、北町同心・表勘兵衛と息子の慎之介、幼馴染で湯屋の音松、老岡っ引き弥助とその娘で坂本屋で働くお芳など、いずれも個性的である。

ディテールがちゃんと書かれていて、ストーリー展開も巧みで、次回作が期待できる。

物語●八丁堀、地獄橋近くの裏店に住む岡っ引きの銀次は、死体をみると泣き出してしまう癖があった。それは、十年前に習い事の帰りに襲われ身ぐるみを剥がされて乱暴されて大川端に捨てられた妹のお菊の死体を見てからだった。
ある朝、下っ引きの政吉が銀次の家へやってきた。大川に若い女の土左衛門があがったという。「泣きの銀次」と呼ばれる若手岡っ引きの推理は冴えるか!?

目次■なし

装画:百鬼丸
装幀:丸尾靖子
時代:寛政九年
舞台:八丁堀・地獄橋、小伝馬町、御徒町、深川浄心寺ほか。
(講談社・1600円・1997/12/15第1刷・274P)
購入日:1997/12/14
読破日:1998/1/13

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『泣きの銀次』(宇江佐真理・講談社文庫)