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斬られ権佐

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斬られ権佐斬られ権佐
(きられごんざ)
宇江佐真理
(うえざまり)
[捕物]
★★★★☆☆

八十八の刀傷を持つことから「斬られ権佐」と呼ばれる男の一途な思いを描く時代小説。

『あなたの胸で眠りたい―長安遊侠伝』などの、中国を舞台にした時代小説(和製武侠小説)を数多く書かれている藤水名子さんという作家がいる。ちょうど、読み終えたばかりの『斬られ権佐』で、解説を書かれていた。同世代のせいか、作品に関連したTVドラマの話に「ウンウン」とうなずきながら、共感を覚えた。また、時代小説のファンでもあり、アンソロジーを編集されたということで、それもぜひ読んでみたい。

『斬られ権佐』は、惚れた女を救うために、八十八の刀傷を負った仕立て屋で、与力の小者を務める、権左が活躍する人情捕物帳。捕物を扱っているとはいえ、人情派作家の宇江佐さんらしく権左とその妻で女医のあさみ、娘お蘭を中心とした家族の物語となっている。権左が仕える与力の菊井数馬や、同じ小者として体の不自由な兄を助ける弥須、実父で仕立て屋の次郎左衛門、義父で外科医の麦倉洞海ら、周囲の人物も個性的に描かれている。

実は連作形式の物語の終盤で、読みながらボロボロと涙がこぼれてしまった。一途に人を思う主人公の姿にジーンときた。とはいえ、本を読んで泣くなんて大の男がみっともない。家人の留守中で良かったとも思っている。

物語●「斬られ権佐」向島の料理茶屋で押し込みの事件が起きた。料理茶屋の亭主が殺され、番頭が深手を負った。与力菊井数馬の小者を務める権左は番頭を八丁堀の外科医麦倉洞海の許に運んだ…。「流れ灌頂」権左は娘のお蘭を連れて、日本橋の蕎麦屋はし膳に足を向けた。はし膳は権左が子どもの頃から知っている店だったが、しばらくぶりに訪れると、蕎麦の味が落ちていた…。「赤縄」権左と弟の弥須は、葭町の蔭間茶屋で相対死(心中)した、二人の男のことを調べていた…。「下弦の月」権左の女房で女医のあさみは、南町奉行所与力の菊井数馬の組屋敷を訪ねた。数馬の妻の梢が三男の三郎助を出産し、祝いの品を届けたのだった。そこで、数馬に外でちょっと一杯と誘われた…。「温」権左は溜まっていた腹水を抜く手術を受けて、年の暮れから正月まで床の中で過ごしていた。麦倉家の手当場でのやり取りや物売りの声などで退屈することなく、毎日暮らしていた…。「六根清浄」権左の六歳になる娘のお蘭は花見に行きたいと駄々をこねて母親のあさみを困らせていた。医者を生業とする麦倉家では花見は無縁で、権左も床に臥しているために連れて行くことはできなかった…。

目次■斬られ権佐/流れ灌頂/赤縄/下弦の月/温/六根清浄/解説 藤水名子

カバー:安里英晴
AD:松岡史恵
解説:藤水名子
時代:明記されず
場所:向島、八丁堀、呉服町樽新道、代官屋敷通り、稲荷新道、両国広小路、魚河岸(本船町の通り)、海賊橋、荒布橋、葭町、小網町、茅場町、
(集英社文庫・552円・05/04/25第1刷・307P)
購入日:05/04/28
読破日:05/05/07

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