妾屋昼兵衛女帳面 側室顛末

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

妾屋昼兵衛女帳面 側室顛末
妾屋昼兵衛女帳面 側室顛末
(めかけやちゅうべえおんなちょうめん そくしつてんまつ)
上田秀人
(うえだひでと)
[武家]
★★★☆☆☆

女を商売のタネにしているようなタイトルで、ちょっと上田作品らしくないと思ったのだが、読み始めたら、テンポがよくストーリーが展開し、チャンバラシーンも圧巻な上田ワールドが広がっている。伊達家の継嗣に、幕閣も巻き込みスケールが大きな御家騒動に。

主人公の昼兵衛(ちゅうべえ)は、浅草の口入れ屋の主だが、人足や女中の紹介はせずに、妾だけ、そのため「妾屋」と呼ばれる。妾屋は、女の身元がはっきりしていないと困る身分ある武家や、かなりの資産のある商家、はやりの医者がクライアント。昼兵衛は、妾の仕事は閨ごとよりも安らぎ、男をいやすのが本業という。

そして、もう一人の主人公が、仙台藩江戸番馬上役二百石の大月新左衛門。彼が振るうタイ捨流の剣は、冒頭の藩主の前での御前試合のシーンでいきなり見られる。江戸番馬上役の役目は、戦場での藩主護衛だが、泰平の世では閑職といえる。

江戸番馬上役のほかにも、他藩でいう家老の代わりに藩運営の実権を握る若年寄(その上に奉行が置かれていた)など、仙台藩独自の職制があって興味深い。

物語はその二人と、側室として派遣される浪人の娘・八重を中心に、仙台藩の御家騒動と、それに加担し自身の出世・権力拡大につなげようとする幕府高官が絡んでいく。

今後、昼兵衛(名前からしていわくがありそうだが)の正体や妾屋を営むようになった過去が明らかになっていくことも期待され、2作目が楽しみである。

主な登場人物◆
山城屋昼兵衛:妾屋「山城屋」の主
大月新左衛門:伊達家江戸番馬上役
菊川八重:妾奉公をする元武家の娘
伊達斉村:仙台伊達家第八代藩主
興姫:斉村の正室
立花内記:伊達家若年寄
坂玄蕃:伊達家用人
井伏左近:伊達家若年寄
高蔵源之助:伊達家勘定奉行
徳川家斉:十一代将軍
林出羽守忠勝:家斉の小姓
加納遠江守久周:徳川家側衆
岡野肥前守知暁:徳川家留守居役
谷口伝兵衛:伊達家剣術指南役。柳生新陰流の遣い手
二島主水:大月新左衛門の剣の師匠。タイ捨流の遣い手

物語●世継ぎなきは御家断絶。苛烈な幕法に苦しむ大名・旗本はひそかに妾屋を訪れた。その妾屋の山城屋昼兵衛のもとに、ある日、仙台藩主の側室の求めが。
将軍家斉の側室が懐妊し、男子が生まれたら大名家に養子として押し付けるという噂もあり、仙台藩では早く嫡子をと考える若年寄の立花と、将軍家から養子を迎えることで危殆に瀕した藩の財政を立て直そうとする若年寄井伏が対立していた…。

目次■第一章 大名の意義/第二章 利害相克/第三章 権の争奪/第四章 女人受難/第五章 系譜錯乱/終章

カバーイラスト:西のぼる
カバーデザイン:多田和博
時代:寛政五年(1793)
場所:仙台藩江戸上屋敷(芝口三丁目)、浅草門前町、南本所の林出羽守忠勝の屋敷、仙台藩下屋敷(麻布本村町?)ほか
(幻冬舎・幻冬舎文庫・648円・2011/09/10・382P)
購入日:2011/10/15
読破日:2011/11/05

■Amazon.co.jp
『妾屋昼兵衛女帳面 側室顛末』(上田秀人・幻冬舎文庫)