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浪華の翔風

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浪華の翔風
浪華の翔風
(なにわのかぜ)
築山桂
(つきやまけい)
[捕物]
★★★★☆

江戸時代の大坂を舞台にした、時代小説は少なく貴重。江戸期の中で、大坂が注目を浴びるのは、慶長の大坂冬・夏の陣を除くと、大塩平八郎の乱があった天保期まで待たなければならない。しかも、書き手も少ない。大阪出身の司馬遼太郎さんや、最近、作品を読むことが難しくなっている、有明夏夫さんぐらいしか思い浮かばない。

そんなおり、この本と出合えたことは本当にラッキーだった。著者紹介によると、作者は京都生まれで、大阪大学大学院博士課程在学中(1998年9月現在)、日本史専攻とのこと。また、発行元の島影社は、長野県諏訪に編集室があるようだが、どういう経緯で上梓されたのかも興味あるところだ。

作品は、中央権力の代表である大坂城代と地元民の対立がテーマになっている、一種の伝奇小説である。今まで大坂城代の役割が浮き彫りになるような作品は、ほとんどなかっただけに新鮮である。

不幸な生い立ちをしながら、健気に生きるヒロイン、優等生のあこがれの人の存在、謎の美形キャラ、ヒロインを助ける世間を知り尽くした老人…。ひところの少女マンガ風の展開に好感が持てる。

物語●闇の中で、茶染の装束で頭まで覆い隠した集団が大坂城の外堀に浮かぶ何かを引き上げようとしていた。指揮をとっていたのは、奇妙な鬼の面をつけた長身の影であった。大坂城代配下の御城影役と呼ばれる忍び働きを務める若い娘あやは、その鬼の面の曲者に立ち向かったが…。

目次■序 大塩平八郎/一 鬼面/二 お千代/三 闕所/四 城代下屋敷/五 道修町/六 千貫櫓/七 長崎/八 太秦広隆寺/九 新吉/十 島場所/十一 大坂城代/十二 中之島蔵屋敷/十三 阿片/十四 四天王寺

カバー画:『浪花百景』の内「筋鐘御門」(国貞画)―大阪市立博物館所蔵
装幀:野村美枝子
時代:天保元年(1830)
場所:大坂城
(鳥影社/星雲社発売・1,800円・98/09/20第1刷・304P)
購入日:98/11/06
読破日:99/04/10

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