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岡っ引無宿

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岡っ引無宿岡っ引無宿
(おかっぴきむしゅく)
多岐川恭
(たきがわきょう)
[捕物]
★★★★

蓬田さんの装画に惹かれて購入する。今まで、「ゆっくり雨太郎捕物控」が面白いという話は聞いていたが、エロチックなイメージがあって、多岐川さんの作品は敬遠していた。本作品は連作形式の捕物帳ということで、とっつきやすそうなので、読んでみることにした。読んでみて認識が変わった。巧いというか、手慣れているというか、職人的で、この作品を読んだ印象は笹沢左保さんの作品に似ている。

各話の起こり(始まり)が巧いのですぐ引き込まれてしまう。主人公の渡り者の岡っ引・半太の設定がユニーク。読む前は渡世人の親分が二束のわらじで岡っ引をしているのかと思っていたが。いろいろな親分の下で働くということで、主人公と犯人の関係だけでなく、主人公と親分(とその身内)の関係も楽しめる。

「濡れた心」で第四回江戸川乱歩賞を受賞したように、その謎やトリックを解決する推理の面でもヒネリが利いている。多岐川さんの他の作品を読むのが楽しみになった。

物語●「女の上に猿がいた」浅草の権田原の草むらで若い女が殺されていた。死体の上には一匹の子猿が乗っていた…。「朱唇の怨み」若い男が胸や下半身をメッタ刺しにされ死んでいた。左の腕には歯形と鮮やかな紅がついていた…。「なまくら刀が譲られた」半太は、若い男に突き当たられて倒れた浪人者を助けた…。「旅の半太」甲州街道を旅して、玉川のほとりでわらじを脱いで休んでいた半太は、三人の渡世人に襲われた…。「降り止んだ雪」半太のなじみの女が殺された。犯行現場を訪れた半太は、容疑者として捕らえられる…。「今戸橋のほとり」打ち捨てられた猪牙船のなかで、人が殺されていた…。

目次■第一話 女の上に猿がいた|第二話 朱唇の怨み|第三話 なまくら刀が譲られた|第四話 旅の半太|第五話 降り止んだ雪|第六話 今戸橋のほとり|解説 細谷正充

カバーイラスト:蓬田やすひろ
解説:細谷正充
時代:特定されず
場所:浅草抹香橋、芝口三丁目、四谷塩町一丁目、日野、音羽町二丁目、橋場、今戸橋ほか(光文社文庫・476円・98/01/20第1刷・264P)
購入日:98/01/25
読破日:98/07/16

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