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おこう紅絵暦

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おこう紅絵暦おこう紅絵暦

(おこうべにえごよみ)

高橋克彦

(たかはしかつひこ)
[捕物]
★★★★☆☆

『だましゑ歌麿』に続くシリーズ第2弾。前作とは違い、捕物の主人公が南町奉行所同心仙波一之進から、その妻で元柳橋芸者のおこうに移る。一之進は前作の活躍により、おこうを妻に得たばかりか北町奉行所に移り筆頭与力に出世している。(同心・与力は建前として一代抱えだが、現実にはほとんど世襲の形になっていたので、南町から北町奉行所に移ることも、同心から筆頭与力に昇進することもきわめて異例のこと)

おこうの魅力は、粋と気っぷのよさで、法が守れない弱い者を救うためにとことん闘うこと。元柳橋芸者であるばかりか、「ばくれん」だった少女時代も明らかになる。その過去も彼女にとってはマイナスではなく、事件を解決する力になっている。おこうの行動力と謎解きの楽しさ、登場人物たちの掛け合いの面白さ、人情味があふれる、楽しい捕物帳になっている。これは前作とまったく異なる味わいである。

おこうは霊験などの特殊な能力をもっているわけでも、武勇に優れているわけでもなく、頭脳が並外れて優秀なわけでもない。おこうは、つい見落としがちなちょっとしたことが気になったり、不審な点に目がいくと、なぜ、そうなのか調べてみる。そこに解決の糸口が見つかる。喉につかえがあると落ち着かない性格が、事件を解く行動力となる。そして、このおこうを助けるのが、隠居の左門であり、浮世絵師春朗(若き日の葛飾北斎)である。

ブログ◆
2006-03-24 与力の女房が活躍する捕物帳

物語●「願い鈴」筆頭与力の妻おこうのもとに、柳橋時代の同僚のおしずがやってくる。柳橋で花や辻占売りをしていた少女お鈴が幇間(たいこもち)殺しの疑いで捕まったという。無実のお鈴を助けてほしいと頼むが……。「神懸かり」柳橋の料亭に勤めるおそのの三年前に家出した息子の鏡平が戻ってきた。しかし、頭に大きな瘤をこしらえて三年間の記憶はないという……。「猫清」左門のお気に入りの絵師春朗が仙波家を訪れ、おこうに、猫好きの彫師が首をくくって死んだ話をした……。「ばくれん」おこうの柳橋時代の友達のお信がやってきて、ばくれん時代の仲間のお秋が殺しの疑いをかけられて番屋で毎日取り調べを受けているという話を教えた……。「迷い道」おこうは、気晴らしに八王子を旅してきた左門を訪ねて府中に出かけた……。「人喰い」かつて仙波家の家事手伝いをしていたお光が人喰い鬼に襲われた死骸を見て寝込んだという話を聞いて、おこうは見舞いに訪れる……。「退屈連」春朗は、退屈連と名乗る狂歌好きの者が集まる酒席で聞いた奇妙な話を左門とおこうにはじめた……。「熊娘」小者の菊弥は、浅草で見てきたばかりの見世物の話を厨でしていた。その話に耳をとめたおこうは、その見世物の女が知っている娘ではないか思われ、菊弥に詳しく調べるように命じた……。「片腕」半月ほど前に顔を潰された死骸が両国橋の橋下に投げ捨てられる事件があった。顔ばかりか左の腕もなぜか切り落とされていたという……。「耳打ち」小屋が開いて間もない刻限だというのに河原崎座は中村滝太郎目当ての客の熱気でむせ返っていた……。「一人心中」お鈴の母親捜しをしていた菊弥が、それらしい女を見つけたという……。「古傷」おこうは、人足寄場から解き放ちになった鏡平から、秋太郎という人に牢屋で知り合ったと聞いた……。

目次■願い鈴|神懸かり|猫清|ばくれん|迷い道|人喰い|退屈連|熊娘|片腕|耳打ち|一人心中|古傷|解説 諸田玲子

装画:小泉英里砂
装丁:関口聖司
解説:諸田玲子

時代:明記されず。寛政の改革のころ
場所:八丁堀、福井町、柳橋、通油町、本所、湯島天神、府中、六所明神、分倍河原、南大工町、浅草、品川、ほか

(文春文庫・514円・06/03/10第1刷・327P)
購入日:06/03/12
読破日:06/03/24

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