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完四郎広目手控

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完四郎広目手控
完四郎広目手控
(かんしろうひろめてびかえ)
高橋克彦
[捕物]
★★★★

江戸の広告代理店・広目屋という商売にスポットを当てたのが面白い。主人公は、旗本の御曹司でお玉ヶ池の道場(千葉周作道場)で目録をとっている剣の名手でもある香冶完四郎。わけあって、上野の広目屋藤岡屋由蔵の元に居候しているのが昔の娯楽時代劇風で趣がある。それに若き日の仮名垣魯文がからむ。魯文というと、どうしても杉本章子さんの『名主の裔』(文春文庫)を思い出してしまうのだが…。

浮世絵に造詣が深い作者らしく、歌川広重の「名所江戸百景」から各話とも連作形式ながら2点の絵を取り出して結びつけるような形でストーリーを構成しているのが面白い。また、12話の話を通して江戸の名所と季節が楽しめる趣向もいい。

幕末の有名人たちがチョイ役で登場するのも見逃せない。

◆主な登場人物
藤岡屋由蔵:上野の古本屋で広目屋の主人、通称藤由
香冶完四郎(こうやかんしろう):藤岡屋の居候
仮名垣魯文:駆け出しの戯作者
お滝:茶屋の女主人
お新:柳橋芸者
さやか:完四郎の従妹
一恵斎芳幾:歌川国芳門下の絵師
浅井久之進:本所南割下水に屋敷をもつ旗本
お映:予知能力を持つ娘
国玉:豊国門下で花火絵を得意としている
お貞:吉原・京屋の遊女
松吉:押上の船頭

物語●「梅試合」藤由は、亀戸の梅屋敷で、梅を詠んだ句や川柳の優劣を競う梅試合が企画した…。「花見小僧|完四郎が考えた花見時期に合わせた瓦版の続き物の工夫とは…。「化物娘」身の毛もよだつ化物娘の噂が江戸市中に広まった…。「雨乞い小町」川越の雨乞い小町と呼ばれる娘が江戸に住まいを移したことから事件が…。「花火絵師|錦絵の版元が花火の絵を褒賞付きで募集した。藤由一味は、一席になる絵をお映に占わせるが…。「悪玉放生」放生会を一月後に控え、由蔵は二匹の亀をぶら下げて外回りから帰って来た…。「かぐや御殿」狂歌を趣味とする金持ち連中が品川で月見に出かけて、お姫様に歓待されたが…。「変生男子」吉原の遊女が突然、男になった、という噂が流れた…。「怪談茶屋」本物そっくりで精巧なことで大坂で興行しはじめた松本喜三郎の怪談人形が江戸の町にあり、探している人がいるという話を国芳が持ち込んできた…。「首なし武者」出羽山形で首なしの武者の死体が百姓家の庭で発見された。しかも大仰な鎧を着込み、血だらけの槍まで落ちていたという…。「目覚まし鯰」近々地震が江戸を襲うというお映の託宣をもとに完四郎らは被害を最小限に押さえるために奔走した…。「大江戸大変」遂に地震が江戸の町を襲った…。

目次■第一話 梅試合|第二話 花見小僧|第三話 化物娘|第四話 雨乞い小町|第五話 花火絵師|第六話 悪玉放生|第七話 かぐや御殿|第八話 変生男子|第九話 怪談茶屋|第十話 首なし武者|第十一話 目覚まし鯰|第十二話 大江戸大変

装画・挿画:集英社版浮世絵大系 安藤広重「名所江戸百景」より
装丁:多田和博
時代:安政二年正月
場所:亀戸、上野、王子、駒込富士前町、大川、品川、吉原、秋葉権現、高輪牛町、雷門、青山
(集英社・1,700円・98/08/30第1刷・317P)
購入日:98/08/29
読破日:98/09/06

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