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火城

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火城火城
(かじょう)
高橋克彦
(たかはしかつひこ)
[幕末]
★★★★☆

高橋克彦さんの作品を集中的に読んでいた頃(1992)、時代小説(歴史小説)と思わずに手により読み出して、感動した記憶がある。剣や血に拠らないで、幕末を迎えた人物の物語が熱い。

あとがきによると、高橋克彦さんの初の歴史小説とのこと。ちなみにこの作品の前年に書かれた「舫鬼九郎」は初の時代小説と本人の中ではその位置付けを使い分けておられた。

幕末という日本中が沸騰した蒸気機関のようになっていた時代に、思想や政治ではなく、ひたすら技術革新に目を向けていた佐賀の特異性、先進性が、佐野栄寿という実在の人物を通して描かれている。

タイトルの「火城」とは、陣の周囲に松明をならべて防壁となすことで、佐賀藩主・鍋島閑叟が栄寿に「佐賀ほど先を照らす人間を集めている国はなかろう。」「おまえも佐賀に燃え盛る火の一つだ」と言葉をかけるシーンがあり、なぜ佐賀藩が武力行使のイメージがあまりないままに、明治維新にあって重要なポジションに着けたのかがわかった気がする。

再読してみて、意外なところに井伊直弼の懐刀である長野主馬(主膳)が出てきてびっくりした。

物語●泣く、ということはひとつの才能である。武士の世にあって男はけっして涙を見せるものではないと厳しく教育されている。まして、『葉隠』を家訓とした肥前佐賀藩ではもっとも徹底していたはず。そんな中にあって、しばしば泣き、その見事な泣きぶりによって人の心を揺さぶり、歴史に足跡を残した男がいた。日本赤十字社の生みの親佐野栄寿(えいじゅ、後の常民・つねたみ)である。

目次■切り火/非常の人/対峙/航海/黒船/火城/曙光/あとがき/解説 清原康正

カバーイラスト:森英二郎
解説:清原康正
時代:嘉永三年冬
場所:下谷御徒町、東洞院姉小路北笹屋町、四条河原、草津、宮腰、長崎、佐賀ほか
(角川文庫・619円・01/11/25第1刷・366P)
購入日:01/11/23
読破日:02/01/22

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