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赤目 ジャックリーの乱

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赤目 ジャックリーの乱赤目 ジャックリーの乱
(あかめ・じゃっくりーのらん)
佐藤賢一
(さとうけんいち)
[西洋]
★★★☆☆

13世紀半ばに、フランスに吹き荒れた農民反乱の嵐、「ジャックリーの乱」を描いた、直木賞作家佐藤賢一さんの第3作目の長編。乱の指導者、ジャック・ル・ボノム(善人ジャック)の側にいた一農民の目から描いている。

盲従してきた貴族とその家族を相手に、徒党を組んで、殺戮、強姦、略奪する、農民たちの慈悲もない、残酷さが、中世という時代を感じさせる。一歩間違うと、エログロ趣味に陥りがちな題材をエスプリに富んだ形でまとめた作者の資質を評価したい。

物語●あらすじは、目次をご覧ください。

目次■プロローグ:世直しの気運高まるフィレンツェで、フレデリが二十年ぶりに再会した友ジェロームは、かつてあった灼熱の日々の記憶を持ち出すくせに、真実の“赤目”の行方を知らずにいたため、まさに死ぬほど驚いたという話/第一章:ペルヌ村の惨状をみるにつけ、フレデリが慕う乞食坊主ジャックは、炯眼の知恵者として不条理な貴族の悪政を暴き出し、村人たちを説き伏せて蜂起の武器を取らせるのだが、その実は摩訶不思議な力を持つ“赤目”が怪しく閃いていたという話/第二章:村人たちは領主アンゲランを撲殺するや、それが正義だと“赤目”にたきつけられ、可憐な令嬢シャルロットまで皆で手込めにするのだが、臆病者のフレデリはうろたえて逃げたため、かえって淫らな貴婦人ブリジットに辱められるという話/第三章:暴徒の猛威が荒れ狂い、貴族という貴族が血祭りに上げられる中、フレデリは愛らしく清純な女マリーを守ろうと必死だったが、その白く豊かで官能的な肉体は“赤目”に取り憑かれた凶悪な暴徒に、ついに陵辱されてしまうという話/第四章:人間を見限ったフレデリは新世界の旗手として働くが、重大な使命のために“赤目”の力で「王」に登った怪僧ジャックの下を離れ、復讐の騎士として尊大な女ブリジットを裸で縛り上げはしたものの、若い苦悩はさらに深まる話/第五章:苦悩の末に友と別れ、将来を誓った女まで捨てたフレデリは、無残な処刑を目撃しながら“赤目”にすがって最後まで駆け抜ける覚悟を決め、甘えたがりの少女を犯す禁断の夢に遊んだ果てに、ただ美しい結晶をみつけたという話/エピローグ:混沌としたフィレンツェの片隅に、やっと手にした平和な家庭の団欒で、フレデリは心配性の妻と向き合いながら、愛息子に寄せる期待を熱っぽく語るのだが、それは“赤目”を信奉する男の、新たな予感に他ならなかったという話

装画:森流一郎
装幀:坂川事務所
時代:1358年、1378年
場所:フィレンツェ。フランス・ボーヴェ地方ペルヌ村ほか
(マガジンハウス・1,400円・98/03/19第1刷・237P)
購入日:99/09/06
読破日:99/09/26

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