犬吉

犬吉犬吉

(いぬきち)

諸田玲子

(もろたれいこ)
[伝奇]
★★★★☆

赤穂浪士討ち入りと生類憐れみの令を結び付け、狂気と恋を描く長編。討ち入りの興奮が冷めやらない、中野の野良犬収容小屋という、特異なシチュエーションで展開される恋と狂気が、サスペンスに満ちた描かれる新感覚の時代小説でグイグイ引き込まれた。

生類憐みの令のもと、中野村に野良犬収容所が作られた。最盛期には十万匹ともいえる犬が集められたという。今まで、話にはよく聞いていたが、実際に時代小説でこの巨大な犬小屋を舞台に描いた作品はなかったのではないだろうか。諸田さんは、この野良犬収容所(御囲)のある特別な一日を、とんでもなく面白い話に仕立てている。

語り手が「犬吉」と呼ばれる、御囲で犬の世話にあたる娘なために、最初こそ、その蓮っ葉な口調に違和感を覚えるが、読み進めるうちにこの一人称の語り口がしっくりくる。

そういえば諸田さんには、同じように歴史における特別な一日を描いた、『其の一日』という作品もあった。

ブログ◆
2006-03-21 生類憐れみの令と赤穂浪士討ち入り

物語●元禄十五年十二月十五日、御囲で犬の世話にあたる娘・犬吉(いぬきち)は、詰所で御鷹御犬索(おたかおいぬさく)の依田峯三郎と出会う。依田は、将軍家の御狩場で働く猟犬を飼育することがお役目だったが、生類憐れみの令が発布されて殺生が禁止になり、狩が行なわれなくなり、仕事がないので御囲にまわされたのだった……。

目次■犬吉/参考資料/犬吉あとえ 黒鉄ヒロシ

装画:黒鉄ヒロシ
装丁:大久保明子

時代:元禄十五年十二月十五日
場所:中野村、ほか

(文春文庫・514円・06/03/10第1刷・258P)
購入日:06/03/12
読破日:06/03/21

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