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幻色江戸ごよみ

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幻色江戸ごよみ幻色江戸ごよみ
(げんしょくえどごよみ)
宮部みゆき
(みやべみゆき)
[ホラー]
★★★★☆☆

これはまぎれもなく、“ミヤベ・ワールド”である。下町の人情と怪異を一カ月一話という形で綴る十二話。怖くて、切なくて、心温まる作品集だ。こよみとタイトルについているだけあって、江戸の四季折々が巧みに作中に取り込まれている。

宮部さんの時折使う修飾の表現が気に入っている。
たとえば、「なんと面妖な話だ、蓼食う虫も好き好きとは言うけれど、お城のお堀から百貫目のなまずが浮かび上がって手招きしたって、あたしゃこれほど驚きゃしませんよと思っていることがうかがわれる」(「器量のぞみ」より)や「心に湯を注ぎこまれたような気がしてくる。その湯はときにはほんのり温かく、いい気持ちにさせてくれるが、また時には、少しばかり熱すぎて、五郎兵衛の心の奥に、痛いほど強くしみることがある。」(「庄助の夜着」より)、「心のなかからゆっくりと、甘酒がわきたつようにして、とろりとした笑いがこみあげてきた。」(「首吊り御本尊」より)といった具合だ。

物語●「鬼子母火」師走の夜に新川の酒問屋で起こった小火の原因は…。「紅の玉」天保の改革のせいで、一流の腕を持ちながら、貧困にあえぐ飾り職人がいた…。「春花秋燈」行灯にまつわる不思議な話とは…。「器量のぞみ」自他ともに認める醜女で大女に持ち込まれた縁談とは…。「庄助の夜着」庄助は古着屋で見つけた夜着をとても気にいっていた…。「まひごのしるべ」盆市で拾った迷子の首にかけられた迷子札の謎とは…。「だるま猫」火消しにあこがれた若い男がいた…。「小袖の手」娘がはじめて買ってきた小袖をみた母親は…。「首吊り御本尊」奉公が辛くて逃げ出した奉公人に大旦那がした話とは…。「神無月」毎年神無月が来るたびにする男たちの行動とは…。「侘助の花」それは看板屋がついた嘘から始まった…。「紙吹雪」質屋の女中は、屋根の上から雪を降らせることを夢見ていた…。

目次■第一話 鬼子母火|第二話 紅の玉|第三話 春花秋燈|第四話 器量のぞみ|第五話 庄助の夜着|第六話 まひごのしるべ|第七話 だるま猫|第八話 小袖の手|第九話 首吊り御本尊|第十話 神無月|第十一話 侘助の花|第十二話 紙吹雪|解説 縄田一男

装画:藤田新策
装幀:新潮社装幀室
解説:縄田一男
時代:「紅の玉」天保十四年
場所:新川、石原町、北森下町、高橋たもと、馬喰町、通町、根津
(新潮文庫・552円・98/09/01第1刷・330P)
購入日:98/08/28
読破日:98/08/30

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