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まほろばの疾風

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まほろばの疾風まほろばの疾風
(まほろばのかぜ)
熊谷達也
(くまがいたつや)
[蝦夷]
★★★★☆☆

八世紀末に、東北で活躍したアテルイの生涯を描いた話題作。アテルイというと高橋克彦の作品を思い出すが…。『ウエンカムイの爪』で第十回小説すばる新人賞を受賞してデビューし、『漂泊の牙』で第十九回新田次郎文学賞を受賞した新進気鋭の冒険小説作家の初の時代小説。

古代東北を舞台としたロマンあふれる快作。東北出身(宮城県)ということから、蝦夷に対する著者の眼差しが温かい。父と子の愛憎、自然と人の共存と対立、狩猟と稲作、蝦夷と中央と周縁地、民族の尊厳…。いくつかのテーマを織り込みながら、等身大のヒーロー、アテルイが魅力的に描かれている。

大和朝廷との決戦を前にして、アテルイがイサワの村人を前に語りかけるシーンで、目頭が熱くなった。忘れられない名場面だ。

歴史書が勝者=征服者側にとって都合のよい記録とすると、このアテルイの物語は小説でなければ書けないものかもしれない。とはいえ、アテルイの好敵手として、日本史の教科書でお馴染みの坂上田村麻呂が登場してきたら、何だかワクワクしてきた。

物語●十二歳の少年、アテルイは、一人前の大人として認められるために、大人用の弓をもって単身猟に出発した、そこで、巫女の修業をしている少女モレと出会う。モレの助けを借りながらも、自分の矢で、ツキノワグマを倒した。
猟からもどった、アテルイの住むトイメムの村は、生き別れた父・アザマロが率いる大和朝廷のの軍勢に焼き討ちされ、多くの村人が殺され、アテルイも俘囚にされた…。

目次■目次なし

イラスト:田辺茂
デザイン:藤井康生
解説:細谷正充
時代:776年頃
(集英社文庫・895円・03/07/25第1刷・541P)
購入日:03/07/26
読破日:03/09/01

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