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傷 慶次郎縁側日記

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傷 慶次郎縁側日記 慶次郎縁側日記
(きず・けいじろうえんがわにっき)
北原亞以子
(きたはらあいこ)
[捕物]
★★★★☆☆ [再読]

単行本新刊時に、読んで書評を書いて以来、このシリーズを読んでいないのだから、あまりいい読者とは言えない。その後、単行本は、『再会』『おひで』『峠』と3作も出ているのだから。

「その夜の雪」については3回目になるが、何度読んでも切なくなってしまう。この切なさを乗り越えたあとだけに、以降の話の懐の深さが堪能できる気がする。人間通になれる一冊。各話それぞれが芝居の一幕物のような上質の空間を感じさせる名作。

主人公というか、進行役というか、物語の観察者というかを務める元南町奉行所同心で、根岸の寮番の森口慶次郎が、様々な人生経験を持ちながらも、ダメな部分も持ち合わせた、練れたキャラクターであり、安心して読めるシリーズとなっている。溜めていたシリーズの第2作目以降も読まなきゃ。というかいよいよ読みたくなってきた。

物語●「その夜の雪」婿取りが決まっていた慶次郎の娘・三十代が何者かに暴行されて、帰ってきた…。「律義者」同心を辞め、寮番を勤める慶次郎の隣家で何やら揉め事が…。「似たものどうし」吉次は空樽拾いの少年と知り合った…。「傷」慶次郎の知り合いの番頭と、町内の鼻つまみものの二人が弓町の角でぶつかって怪我をしたという…。「春の出来事」慶次郎は、通りで突き飛ばして足首を捻らせてしまった女を見舞った…。「腹痛の妙薬」腰を痛めた慶次郎が医者に出かける途中で出くわしたものは…。「片付け上手」知り合いの煙管を盗んだ娘は、みんなから半人前と言われていた…。「座右の銘」“貧乏人に迷惑をかけぬこと”“身内に迷惑をかけぬこと”を座右の銘にしていた空巣狙いがいた…。「早春の歌」小さな事件をきっかけに、慶次郎は、剣術道場通いの若者たちと親しくなった…。「似ている女」慶次郎のもとに持ち込まれた相談事とは…。「饅頭の皮」慶次郎は通りで、顔色の悪さが尋常でない女を見かけた…。

目次■その夜の雪|律義者|似たものどうし|傷|春の出来事|腹痛の妙薬|片付け上手|座右の銘|早春の歌|似ている女|饅頭の皮|解説 北上次郎

カバー装画:蓬田やすひろ
デザイン:新潮社装幀室
解説:北上次郎
時代:明記されず
場所:八丁堀、霊岸島、根岸、南小田原町、南鍛冶町、本所相生町、下谷町、聖天町、瓦町、代田村ほか
(新潮文庫・552円・01/04/01第1刷・398P)
購入日:01/03/30
読破日:01/08/12

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