利休遺偈

利休遺偈利休遺偈
(りきゅうゆいげ)
井ノ部康之
(いのべやすゆき)
[芸道]
★★★★☆☆

作者は、千家三部作『千家再興』『千家奔流』『千家分流』(いずれも読売新聞社刊)で知られる、時代小説作家。茶道表千家七代目家元・如心斎が主人公ということで読むのがとても楽しみな一冊。
「利休遺偈」とは、千利休が自害時に残した辞世の句を記した直筆の書。千家にとってはもっとも重要な家宝。以下のような内容。

人世七十 力囲希咄
吾這宝剣 祖仏共殺
提ル我得具足の 一太刀 今此時ぞ 天に抛
じんせいしちじゅう りきいきとつ、わがこのほうけん、そぶつともにころす
ひっさぐるわがえぐそくの、ひとつたち、いまこのときぞ、てんになげうち

表千家六代目家元覚々斎とその三人の息子たちが、行方不明になった利休の辞世の書の行方を捜すところで、家族で力を合わせていくシーンで胸が熱くなった。端正な中にもドラマティックな場面があって、面白く読めた。

物語●六代目覚々斎の長男与太郎と次男政之助は、母の秋と三人で、賀茂川の河原に花摘みに出かけた。十歳の与太郎は、花摘みから戻ると、朝食の前に母と二人で利休遺偈を暗誦させられた。朝食後、与太郎は母と四歳下の弟政之助と一緒に、花遊びをした。秋は水をはった桶に三人で摘んできた花を全部入れ、竹籠花入と小刀を一本用意した。摘んできた花を、何でも自分の好きなように花入れに入れていく。次の人が花を差し替えて、草花の組み合わせの妙と品位を感じ取り、そのつど花の形や色彩に工夫をこらして生け変えていくのだ。茶花について関心が深く、繊細優美な才を発揮して、重要な茶事の際も、花のことをまかせられる秋が、遊びを通して子どもたちに、茶席の花について教えていたのだ…。

目次■一、花遊び/二、地口歌/三、茶碗の中の海/四、相次ぐ悲報/五、三本の茶杓/六、寒雲亭の桜/七、冬木屋の茶会/八、深夜の不審菴/九、居士衣の光/十、『天然』の円相/十一、七事式の制定/十二、男子誕生の朗報/十三、寸たらずの遺偈/十四、送り銅鑼の茶会/十五、檜扇の風/十六、利休遺偈披露茶会/十七、坂の上の寂光

カバー画:今井俊満 紅葉賀
カバーデザイン:菊地信義
時代:正徳四年(1714)
場所:賀茂川、本法寺前、和歌山城、寺ノ内通り、船岡山、聚光院、武者小路通り、堺、紀州藩江戸屋敷ほかほか
(小学館文庫・600円・05/05/01第1刷・347P)
購入日:05/04/13
読破日:05/04/28

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