武者とゆく

(むしゃとゆく)

稲葉稔

(いなばみのる)
[市井]
★★★★☆

以前から気になっている稲葉さんの書き下ろし時代小説。浪人と犬が主人公の時代小説ということで、面白そうな予感がして読み始めた。二天一流の遣い手として肥後宇土藩(熊本藩の支藩)から、肥後熊本藩の剣術指南役に抜擢された桜井俊吾は、三年前の大火で妻子を失い、今、主家の宇土藩家老前田興尚の改易により家屋敷・禄を失うことになる。俊吾自身には何の咎もなく御前試合での活躍もあり、浪人となるが藩より江戸に家を与えられる。

当座の生活費と住まいがあるせいか、俊吾には浪人特有の生活感が薄く、ある意味では痛快もののヒーローとして望ましい環境に身を置くことになる。また、犬に注ぐ愛情や市井の人々との交流など、武士としてのプライドや武張ったところがなく、現代風なキャラクターで爽やかで好感がもてる。四十過ぎのおじさんのはずなのだが……。(私もかくありたい)

ブログ◆
2006-04-30 浪人と犬が主人公の時代小説

物語●肥後熊本藩の剣術指南役を解かれた桜井俊吾は、業平橋の近くの藁葺きのしもた屋を直して住み始める。四十路を越えた身で、静かな暮らしがしたいと、近所の子どもたちに読み書きを教える手習い所を開くことを決める。ある日、近くの北十間川の突き当たりで水の流れが止まる、〆切土手と呼ばれるところで、生後一、二カ月と思われる牡犬を見つける。母犬と兄弟を亡くし、衰弱していた子犬を家に連れて帰り「武者(武者)」と名づけて飼うことにした……。

目次■第一章 武者/第二章 お鶴/第三章 阿弥陀坂/第四章 誘い水/第五章 役病神/第六章 裏切り/第七章 鶯の声

カバー装画:安里英晴
カバーデザイン:犬田和楠

時代:天保五年(1834)卯月
場所:肥後熊本藩中屋敷、肥後宇土藩抱屋敷、須崎村飛び地、〆切土手、浅草広小路、上野町一丁目、船堀、国分寺阿弥陀坂、下駒込村ほか

(講談社文庫・571円・06/04/15第1刷・326P)
購入日:06/04/24
読破日:06/04/30

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