恋椿 橋廻り同心・平七郎控

恋椿 橋廻り同心・平七郎控
恋椿 橋廻り同心・平七郎控
(こいつばき・はしまわりどうしん・へいしちろうひかえ)
藤原緋沙子
(ふじわらひさこ)
[捕物]
★★★★☆

廣済堂文庫の「隅田川御用帳」シリーズで活躍中の、藤原さんの新シリーズ。主人公が橋廻り同心というのが興味深い。

主人公の立花平七郎は、北辰一刀流、師範代格の剣客でもある設定。定服として黒の紋付羽織、白衣(着流し)に帯刀という同心姿ながら、十手の代わりに、コカナヅチ大の木槌を手にする。

橋廻りの仕事の第一は、橋げたや橋の欄干、床板を叩いて橋の傷み具合を確かめること。第二は、橋の通行の規制や橋袂の広場に不許可の荷物や小屋掛けの違反者はいないかなど、高積見廻り方同心に似たお役目もになっていた。橋下を流れる川の整備も定橋掛のお役目であった。定町廻り同心がきれいな房のある十手をひけらかして、雪駄を鳴らし、町を見廻るのに比べると、この仕事は地味で、木槌を手に町を歩くのはあまり格好のいいものではなく、奉行所内でも閑職とされ、定員は与力一騎に同心二名、一度この定橋掛に配置されたら、そこから抜け出すのは容易でなかった。

橋廻り同心の仕事を紹介しながら、物語は、なぜ平七郎が閑職に回されるようになったのか?を明らかにしていく。また、話の展開の中で、手馴れた形で、同僚の平塚秀太、上役の大村虎之助、かつての上司の一色弥一郎、平七郎の継母里絵、なじみの水茶屋『おふく』の女将おふくと抱え船頭の源治、読売屋の一文字屋のおこうらの、主要な登場人物を紹介していく。

主人公の仕事を橋廻り同心と設定したところで、本書の面白さが約束されたようなもの。江戸町奉行所の役目を見て、常々気になっていたものだ。今からは想像しにくいが、江戸は川や堀が多い町で、それだけ架けられる橋の数も多く、その橋をめぐるドラマに事欠かないように思われる。藤原さんは巧みに橋を舞台装置として使い、人情の機微に触れる物語を綴ってくれた。

平七郎は、左遷されながらもやけにならないで、人情味あふれる事件解決能力を見せてくれて、救われる連作形式の捕物小説。平七郎の活躍ぶりや読売屋のおこうとの関係が進展するかなど、今後の展開が楽しみなシリーズができた。

物語●北町奉行所定橋掛(じょうばしがかり)、通称橋廻りと呼ばれる同心立花平七郎(たちばなへいしちろう)の父親は、生前『大鷹』の異名をとった凄腕の同心で、平七郎もかつて定町廻りだったころ、『黒鷹』と呼ばれた俊才の人で、若手ではもっとも将来を嘱望されていた。それがあろうことか今は橋廻り同心である。

「桜散る」東堀留に架かる親父橋の点検に当った平七郎は、橋袂の川べりで若い町家の女の遺体を見つけた…。「迷子札」日本橋川に架かる橋で最もお城よりにある一石橋に、迷子を知らせる御知らせ柱が立てられた。平七郎は、その木柱の前に老人が迷子お尋ねの紙を毎日張りに来るのを見つけた…。「闇の風」平七郎は、三十間堀川に架けられた紀伊国橋をわたる女の後姿に釘付けになった。男の欲情をそそるような淫靡な匂いのする女は、平七郎が定町廻りのころに、捕まえて島送りにした男の女房だった…。「朝霧」薬研堀に架かる元柳橋の袂で、五色団子の屋台を三十半ばの夫婦者がいた。平七郎はこの近くに来ると、必ず団子を買って帰っていっが、その日は団子売りの夫婦の姿はなかった…。

目次■第一話 桜散る/第二話 迷子札/第三話 闇の風/第四話 朝霧

カバーイラスト:蓬田やすひろ
カバーデザイン:中原達治
解説:清原康正
時代:明記されず
場所:親父橋、堀江町、芳町、永代橋西詰、市ヶ谷、平永町、北森下町、一石橋、元大工町、品川町、通油町、諏訪町、紀伊国橋、木挽町、材木町、元柳橋ほか
(祥伝社文庫・600円・04/06/20第1刷・300P)
購入日:04/07/07
読破日:04/08/16

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