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花あざ伝奇

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花あざ伝奇
花あざ伝奇
(はなあざでんき)
安西篤子
(あんざいあつこ)
[中国]
★★★★

安西さんというと、戦国時代の女性を描いた作品のイメージが強い。しかし、直木賞受賞作も含めた、この作品集は中国小説ばかりである。 藤水名子さん、井上祐美子さん、狩野あざみさん、森福都さん…、中国時代小説を書かれる若手の女性作家が多い。というかその活躍ぶりは中国時代小説を引っ張っているといっても過言ではない。どうしてだろうか?

男性中心社会で、女性(ヒロイン)の活躍の場が限定された、日本の時代小説の世界よりも、中国時代小説の世界の方が自由度が高いからだろうか?

あとがきによると、安西さんは、昭和十年代に、七歳~十四歳まで、中国各地で過したという。そのため、中国を故郷同然に思い、望郷の念から中国に関する小説や歴史物語をむさぼり読み、中国時代小説の筆を執ったそうだ。すなわち、中国小説がルーツというわけである。しかもデビュー作の「張少子(チャンシャオツ)の話」で第52回直木賞を受賞する。解説には、その際のエピソードについて、清原さんが触れられていて興味深い。

中国時代小説を守備範囲外であるが、殷の滅亡を題材にした「妲己伝」、秦の始皇帝の後見役・呂不韋を描く「仲父よ蜀におれ」、唐の後期の政変を扱った「甘露の変」がとくに面白かった。宮城谷昌光さんの『奇貨居くべし』が読みたくなった。

物語●「花あざ伝奇」江南王のむすめ婉は、うまれつきからだに痣があった。その婉が十八歳になったとき、五十歳近くで辺境にある北寧王から婚姻の申込みがあった…。「妲己伝」殷の王、受に献じられたたき、妲己は十七歳で国元に言い交わした男があった…。「仲父よ蜀におれ」呂不韋は、朱太后の寝所で数刻を過し、いとまごいをしようとした…。「烏孫公主」謀反人の娘・細君は、漢の武帝の命で、烏孫の老王の昆莫に嫁がされることになった…。「朝焼け」曹操は、甥の曹安民に城内の妓女を呼びにやらせた…。「甘露の変」陳慶は、友人の崔勝が勤めを辞め、自宮したという報を聞いた…。「張少子の話」先帝の子で謀反の罪で追われた張少子は、張ニと旅回りのインチキ奇術で生計を立てていた…。

目次■花あざ伝奇|妲己伝|仲父よ蜀におれ|烏孫公主|朝焼け|甘露の変|張少子の話|解説 清原康正

カバー切絵:藤城清治
カバーデザイン:鹿島幸子(Cooo)
解説:清原康正
時代:「妲己伝」殷。「仲父よ蜀におれ」秦。「烏孫公主」元封六年(前105)。「甘露の変」唐の文宗の治世。
場所:「花あざ伝奇」江南、張家屯。「妲己伝」朝歌。「仲父よ蜀におれ」咸陽、邯鄲。「烏孫公主」長安、伊寧。「朝焼け」宛城内。「甘露の変」長安。「張少子の話」牛荘城。
(講談社文庫・505円・00/09/15第1刷・248P)
購入日:00/10/07
読破日:00/10/21

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