美貌の平安歌人・和泉式部の愛と死の謎に迫る

今ひとたびの和泉式部諸田玲子さんの長編時代小説、『今ひとたびの和泉式部』(集英社文庫)を入手しました。

小倉百人一首「あらざらむこの世の外の思ひ出に 今ひとたびの逢ふこともがな」で知られる、平安時代の女性歌人・和泉式部の生涯を描いた作品です。自身の恋愛遍歴を綴った『和泉式部日記』は、当時を代表する日記文学となっています。

平安朝、大江家の娘式部は、宮中で太后に仕え、美貌と歌の才を高く評価される。和泉守と結ばれ幸せな日々に、太后危篤の報が届く。急ぎ京へ戻った式部を親王が待っていた。高貴な腕に抱きすくめられ、運命は式部を翻弄していく。愛する人たちを失いながらも、歌に想いを綴っていくが……。浮かれ女と噂を立てられながらも、生涯の愛を探し続けた式部。冥き道をゆく謎多き女性を大胆に描く親鸞賞受賞作。
(本書カバー裏の紹介文より)

親鸞賞は、遇数年に発表される、一般財団法人本願寺文化興隆財団主催の文学賞です。諸田さんは、2018年に本作品で受賞されています。

学生時代に古文が苦手だったこともあり、和泉式部のことをよく知らなかったのですが、「ウィキペディア」でそのプロフィールを調べてみると、華麗な恋愛遍歴をもち、多くの遺跡や逸話をもつ謎めいた生涯を送った女性であることが伝わってきます。

「義母は恋の名手、華やいだ恋がだれよりも似合う女人でした。それが鬼笛大将の妻になりはてるとは……」
「さよう、式部どのは恋がのうては生きてゆけぬお人じゃ。粗忽なごうつくばりの妻にされるとは、さぞや不本意だったにちがいない。若き日の式部どのは男たちのあいだをしなやかにおよぎまわっておられたものよ。とらえどころがなく、なにをかんがえているのかだれにもわからん。父や叔父の想い人と知りつつ、このおれまで胸をときめかせたものだが……むろん、笑っていなれた」
(『今ひとたびの、和泉式部』P.16より)

物語の冒頭で、式部の養母・赤染衛門(「やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな」が百人一首に選ばれています)が娘の江侍従と息子の大江挙周に、和泉式部の追悼の蛍を観る宴を開きます。そこで集まった男たちを交えて、式部の在りし日のことが語られていきます。

式部の二番目の夫なる鬼笛大将とは、藤原保昌のこと。保昌と盗賊・袴垂(保輔)との関わりは、『今昔物語集』に収録された説話でおなじみ。

多彩な人物たちが式部の波瀾に満ちた生涯を彩ります。美貌の歌人の謎めいた素顔と死の真相を大胆に描いていく、平安絵巻を紐解いてみたくなりました。

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『今ひとたびの和泉式部』(諸田玲子・集英社文庫)
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『末世炎上』Kindle版(諸田玲子・講談社文庫)