南国・園瀬で清々しく生きる、道場主の家族の物語

家族 新・軍鶏侍野口卓(のぐちたく)さんの文庫書き下ろし時代小説、『家族 新・軍鶏侍(しん・しゃもざむらい)』(祥伝社文庫)を紹介します。

南国の園瀬を舞台に、剣術道場を営む傍ら、闘鶏用の軍鶏を飼育する岩倉源太夫とその家族や弟子たちを描く、書き下ろし時代小説シリーズの最新作です。前作『師弟』より、「新・軍鶏侍」として新章に突入しました。

「軍鶏侍……か」十九年かけて敵討ちをなし、武士の鑑と讃えられた園瀬の英雄大野礼太郎は、岩倉家の庭でぼそりと漏らした。その大野が突然の乱心を起こし、岩倉源太夫に上意討ちの命が下る。長い歳月を孤独のうちにすごさねばならなかった藩士の胸の内とは(『孤愁』)。淡々と、しかしはっきりと移ろう園瀬の日々に、家族の姿を浮かび上がらせる珠玉の四編を収録。
(本書カバー裏の紹介文より)

本書では、『孤愁』のほか、『似た者夫婦』『遊山の日』『藍と青』の四編を収録しています。源太夫の二人の息子龍彦と幸司の淡い恋と成長や、小男ながら剣客である父を超えようと岩倉道場に入門する少年の物語が清々しく描かれていきます。

ファンにとってうれしいのは、『似た者夫婦』の章で、『ふたたびの園瀬 軍鶏侍』で結ばれた、源太夫の弟子で藩士の東野弥一兵衛と江戸出身で旗本の娘・園の二人が登場し、園瀬での生活ぶりが描かれていることです。

物語の舞台となる、南国・園瀬は架空の地ですが、著者の出身地である徳島を想起させられます。『遊山の日』で藩士たちが遊山をする前山と呼ばれる山も、徳島市のシンボルである眉山(びざん)をモデルにしているように思えてなりません。

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『家族 新・軍鶏侍』(野口卓・祥伝社文庫)(第2作)
『師弟 新・軍鶏侍』(野口卓・祥伝社文庫)(第1作)
『ふたたびの園瀬 軍鶏侍』(野口卓・祥伝社文庫)(「軍鶏侍」シリーズ第5作)