往年の捕物小説復刊。若さま侍の推理と剣が冴える

若さま侍捕物手帖(一)城昌幸(じょうまさゆき)さんの捕物小説をオンデマンド印刷で復刊した、『若さま侍捕物手帖(一)』(捕物出版)を入手しました。

「若さま侍捕物手帖」は、代表的な古典捕物小説である「五大捕物帳」の一つです。
残りの四つは、岡本綺堂さんの「半七捕物帳」、佐々木味津三さんの「右門捕物帖」、野村胡堂さんの 「銭形平次捕物控」、横溝正史さんの『人形佐七捕物帳』。

本書のAmazonの内容紹介によると、「代表的な捕物小説でありながら、長編14、 中編15、短編248編という膨大な作品群のためか、これまで全作品を網羅した全集は発刊されてこなかった。現在存在が確認できている277編を、執筆年代順に網羅する初の事実上の全集化。毎月1冊ずつ刊行予定」とのことで、楽しみです。

著者の城昌幸さんは、1904年東京神田生まれで、1938年に若さまシリーズの第1作「舞扇三十一文字」を雑誌に発表。小説家、詩人(城左門名義)で活躍し、1976年死去。

本書は、(「謎の封筒」で阿部伊勢守が月番老中と記載されたことより)天保末期から安政にかけての幕末を舞台に描かれた推定される連作捕物小説。短編17編が収録されています。

1958年に桃源社や廣済堂出版などで発行された「若さま侍捕物手帖」を底本にオンデマンド本として復刊したものです。
桃源社(とうげんしゃ)は1951年から1981年まで時代小説や探偵小説などの出版を手掛けた出版社です。

「うるさいなア……誰だい?」
 と、うたた寝侍が半身起こした。なんにも心にかかる屈託のなさそうな、いかにものびのびと育って来たという感じのする三十前後のなかなかよい男前だ。血色のよすぎるように見えるのは酒のせいかも知れない。
(『若さま侍捕物手帖(一)』P.2より)

両国柳橋米沢町の船宿喜仙の奥まった一間で、酒に酔い伏してごろりと手枕でうたた寝をするこの侍が、主人公の若さまです。

若さまは、喜仙の一人娘のおいとを相手に酒を呑んだりする気ままな居候生活を送っています。名前も素性も明らかにされていませんが、南町奉行所の与力・佐々島俊蔵が従者のごとく振る舞う、徳川家ゆかりの高貴な身分らしい設定となっています。

本書の面白さは、普段は気ままで怠惰な若さまが、市井に起こる不可思議な難事件に出くわすと、天下一品の直観力と推理力と活人剣で颯爽と解決していくところにあります。

一篇一篇が短めで、起承転結がはっきりしていて、執筆時期が古い作品ながらも、文体も明朗で読みやすく、時代を越えて多くの人たちに愛読されてきたことがうかがわれます。

■Amazon.co.jp
『若さま侍捕物手帖(一)』オンデマンド本版(城昌幸・捕物出版)

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