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館林藩を舞台に下級藩士の成長と人の絆を描く、青春時代小説

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遥かなる城沼安住洋子(あずみようこ)さんの長編時代小説、『遥かなる城沼(じょうぬま)』(小学館文庫)を入手しました。

本書は、上野国館林藩を舞台に、下級武士の家の生まれた、長男惣一郎ら、村瀬家の三兄妹の成長を描いた青春時代小説です。
主人公の惣一郎が優秀な弟妹と比較されて、劣等感に悩む普通の少年という設定に共感を覚えます。

館林藩士である村瀬家の長男惣一郎は、秀才の弟、剣の才を持つ妹と塾や道場に通うのが苦痛になっていた。兄としてふがいない思いになるのだ。父は「頭が良い者だけが優れているわけではない。人は良い心がけで成長していくものではないか」と話しかけてくれた。
惣一郎の成長とともに、周りではさまざまな出来事が起きる。友の離反、父の病、筆頭家老の殺害、館林から浜田への国替え――。歳月を経ても、思い出すのは故郷・城沼の風景だった。風が渡り煌めく湖面、咲き誇る躑躅。そして昔の友からの悲痛な叫びをあげる手紙が届く。人の絆の大切さを描いた青春時代小説。
(本書カバー裏紹介より)

物語に描かれているのは、江戸時代後期(寛政から天保にかけて)で、越智松平家五代松平武厚(後に斉厚に改名)の時代、当時の将軍は十一代家斉です。
ちなみに越智松平家の初代は、六代将軍徳川家宣の弟、松平清武。

著者の安住さんは、1999年、水野忠邦による苛烈な奢侈取り締まりに翻弄される江戸の庶民を描いた「しずり雪」で第3回長塚節文学賞短編小説部門大賞を受賞してデビュー。2012年、『春告げ坂 小石川診療記』で第18回中山義秀賞の最終候補になっています。

小学館文庫から刊行された『しずり雪』には、本書のモチーフの一つを描いた短編『城沼の風』が収録されています。

寡作ですが、人としての真摯な生き様を描く、胸を打つような時代小説に出合える、気になる時代小説家のひとりです。

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『遥かなる城沼』(安住洋子・小学館文庫)
『しずり雪』(安住洋子・小学館文庫)
『春告げ坂 小石川診療記』Kindle版(安住洋子・新潮文庫)