主人公が「わけあり」だから面白い時代小説

鳥羽亮さんの『わけあり円十郎江戸暦』を読んだ。PHP文庫から刊行された文庫書き下ろし時代小説。鳥羽さんといえば、この十年くらいコンスタントに多くの時代小説を発表され、そのいずれもが人気のシリーズになっているため、最近、ほとんど読みきれていないのが実情だ。新シリーズのスタートは、キャッチアップするチャンスと言える。

さて、『わけあり円十郎江戸暦』の主人公・橘円十郎は、直心影流の遣い手で、今は日本橋高砂町の口入れ屋・安田屋の隠居所に一人暮らし。気の合う牢人仲間である馬淵重蔵と宇佐美又八郎とともに、定職はもたず金がなくなると安田屋に仕事を求める。気ままな牢人暮らしを送っている。

 円十郎は二十五歳。まだ独り身である。面長で目鼻立ちはととのっているのだが、すこし垂れ目で顎が張っている。右の目の下に小豆粒ほどの泣き黒子があった。馬面とまではいかないが、おっとりとした性格とあいまって間の抜けた感じがする。

(『わけあり円十郎江戸暦』P.7より)

円十郎と馬淵、宇佐美の三人は、廻船問屋古賀屋からの船荷の陸揚げの仕事の帰りに、羽織袴姿で二刀を帯びた、見ず知らずの四人の男たちに襲われる。ある藩の御家騒動に巻き込まれることになるが、その背後には円十郎の出生の秘密があった…。

ネタばらしになってしまい恐縮だが、タイトルの「わけあり」=出生の秘密というわけだ。詳しくはかけないが、この円十郎の出生をめぐる謎が物語を面白くしている。もちろん、鳥羽作品の魅力である、剣の立合いが随所に描かれていてハラハラキドキすること請け合いだ。