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元・徒目付の深川の隠居が活躍する時代小説

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小林力(こばやしりき)さんの『深川の隠居』を読んだ。元徒目付で林崎夢想流の遣い手である、海津軍兵衛が公儀が裁けぬ悪を斬る、「父子目付勝手成敗」シリーズの第二弾。

父子目付勝手成敗 (学研M文庫)

主人公の軍兵衛は、徒目付の職を息子・俊介に譲り、俊介の住む深川元町組屋敷に、隠居の身としてともに暮らしている。故あっての隠居ということもあり、まだまだ元気で、屋敷界隈を疾駆する「韋駄天稽古」を毎朝の日課にし、夜になれば三間町の小料理屋『酔月』を行きつけにしている。女将の加世からは憎からず思われている。気ままで素敵な隠居生活を送ってくる。

大久保の抜弁天脇の武家屋敷で三人の女が殺される事件が起こった。そのうちの一人は、屋敷の外に出て、弁天様のほうへ、いっぱいに両手を刺し伸ばして死んでいた。下手人の目星がつきながら調べが止まってしまった。どうやら、倒れていた娘の指先に問題があるらしい。事情を知った軍兵衛は憤り行動を起こす…。

悪と知りながらも法や公儀の手では裁ききれないこと、権力の力による理不尽な裁定、そんなことが許せない軍兵衛は、徒目付の職を息子に譲って、私人の立場として、悪を成敗する存在になるのが、このシリーズの設定。いわば、小林版必殺仕掛け人といったところか。面白いのは、法の執行者側にいる息子・俊介の存在。父は父、息子は息子といいながら、勝手に成敗をする自由気ままな父を陰から見守りサポートしている。

著者紹介によれば、小林力さんは1926年生まれというから、誕生日が来れば御年83歳だろうか? 現役で時代小説家を続けている、その元気さは主人公の深川の隠居以上といえそう。いつまでも痛快な物語を書き続けてほしい。

おすすめ度:★★★☆☆