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「風林火山」ばかりでない甲州

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この土日に、山梨県北杜市の高根というところに行ってきた。妻の小学校時代の恩師夫婦が、定年後に八ヶ岳の近くに住まいを構え、田舎生活をしているということで、泊りがけで遊びに伺った。私自身は先生と面識がなく、まったくのおまけの存在だったが、教え子同様に歓待していただいた。F先生、おいしい食事と楽しい話をありがとうございました。多謝。

山梨県というと、NHK大河ドラマ「風林火山」のおかげで、今は県下のどこの駅や土産店に行っても、「風林火山」の四文字と武田菱ののぼりが立ち、信玄、勘助、由布姫の名を見ないことがない。観光客も増えているように思われる。泊まった先生のお宅の近くには山本勘助の墓があった。

山本勘助の墓

なお、勘助の墓は川中島と愛知県豊川市にもあるようだ。

さて、今回の甲州行きに際して、佐藤雅美さんの『啓順純情旅』を旅のともにした。行きの「あずさ」と帰りの「かいじ」の車中で読み進めた。殺人の濡れ衣を着せられた江戸の町医者啓順が、火消し頭の聖天松の繰り出す執拗な追っ手からの逃亡劇を描くサスペンス時代小説の第三弾。やくざの縄張り争いに巻き込まれたり、かつて病から救った女・おきよと再会し、お互いの気持ちを確かめ合ったりと、今回も波瀾万丈のドラマが用意されている。

啓順純情旅 (講談社文庫)

啓順純情旅 (講談社文庫)

物語の中に、主人公の啓順は甲州竹居村の安五郎に味方し、その庇護を受けて甲府で医師として活躍したり、御会式の翌日に大野山本遠寺前の河原で出入りしたり、と甲州を舞台に動き回っていて、まさに甲州小旅行にぴったりの本といったところか。

幕末の渡世人の世界を垣間見ることができて、清水の次郎長や木枯し紋次郎のファンにもおすすめしたい。とくに興味深かったのは、勢力を伸ばして得意の絶頂にあった博徒の親分、竹居の安五郎が大名行列のまねごとをして伊豆の天城越えをしたシーン。