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一伝流vs.一放流

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上田秀人さんの『相剋の渦』を読んだ。勘定吟味役・水城聡四郎が活躍する「勘定吟味役異聞」シリーズの第4弾である。前作『秋霜の撃』で新井白石から忌避されるようになった聡四郎。後ろ盾を失った聡四郎がいかなる活躍ぶりを見せるかが本編の最大の関心事の一つである。

相剋の渦 勘定吟味役異聞(四) (光文社文庫)

相剋の渦 勘定吟味役異聞(四) (光文社文庫)

秋霜の撃 勘定吟味役異聞(三) (光文社文庫)

秋霜の撃 勘定吟味役異聞(三) (光文社文庫)

家継の傅育係・間部越前守への何者かの襲撃、尾張藩を放逐されたお旗持ち衆の暗躍、長崎奉行減員の噂、敵対していた豪商・紀伊国屋文左衛門の接近…、今回も物語は風雲急を告げる。

そんな中で、聡四郎の前に立ちはだかるライバル・永渕啓輔。富田流小太刀の創始者で、稀代の名人富田越後守重政の高弟、富田一放が編み出した一放流を使う聡四郎に対し、永渕は上野国生まれの浅山一伝斎が起こした一伝流の遣い手である。聡四郎の放つ一撃必殺の一放流・雷閃の剣と、永渕啓輔の一伝流前腰の太刀、どちらが勝るのか。

一刀流や新陰流といった剣術のメインストリームにある流派とは違うところに、新鮮さと面白さを感じる。今回は二人の師匠同士の因縁も紹介されていて、興趣がつきない。