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本を読んでいて、汗が噴き出してきた

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荒崎一海さんの『風霜苛烈』を一気に読み終えた。熱を出して寝込んでいる妻のかたわらで読んでいたせいか、途中、物語に集中できずに眠気を感じていた。ところが、物語の残り三分の二を過ぎたあたりで、アドレナリンなのか、ドーパミンなのか、よくわからないがカアーッと出てきて、体温が一気に上がり汗が吹き出てきた。本を読んでいてこんな経験は初めて。

 勇太はひどく沈んだ顔をしていた。

…(二行 略)…

「なにがあったのだ」

「桜井の旦那からお聞きになっておくんなせえ。あっしの口からはとても言えやせん」

 真九郎は胸騒ぎがした。

 ――まさか。

 おのれお思いすごしであることを、真九郎は切に祈った。不安をかきたてるかのように、夜空で風が黒雲をあおっている。

(『風霜苛烈』P.269より)

真九郎を襲った悲劇、それは読者も共有できる悲しみと怒りでもある。そして、その後に来るものは……。

さて、物語のほうに戻ると、

材木屋日野屋の娘おはなが霊岸島で身投げをした。身投げと断じられたのは、身重であったからだ。さる大身旗本の屋敷に見習奉公にでていたが、不始末があったとして唐突に帰されたのだった。屋敷で何かあったのは歴然としている。おはなは、来年には婿を迎えることも決まっており、行儀作法を身につけるための屋敷奉公であった…。

身投げの真相を探る真九郎のもとには、闇の手口とよく似た、押し込み強盗に座頭が殺され金子が奪われるという事件も舞い込んできた。はたして闇の一味の仕業なのか、謎は深まる。

「人の心は、追分で迷い、仏と鬼とのあいだで揺れている。恨みへは一跨ぎで、許しは千里の道よりもなお遠い」

登場人物の言葉が重い。