一放流の剣豪ヒーロー、水城聡四郎

上田秀人さんの『秋霜の撃(しゅうそうのげき)』を読んでいる。この時代小説のヒーロー水城聡四郎(みずきそうしろう)は、五百石高のお目見え以上の役人である勘定吟味役である。勘定吟味役というと、幕府の金の出入りいっさいを監督することが任務である。いわば、会計監査役というところだろうか。

秋霜の撃 勘定吟味役異聞(三) (光文社文庫)

秋霜の撃 勘定吟味役異聞(三) (光文社文庫)

聡四郎は、勘定方の家柄でありながら、家督を継ぐことのできない四男だったために、ずっと剣で身を立てるつもりで、必死に稽古をして、師範代にといわれるまでになっていた。長兄の急逝で家を継いだ聡四郎に、家宣のもとで改革に力を入れていた新井白石の白羽の矢が立ち、勘定吟味役として白石の手ごまとして獅子奮迅の活躍ぶりを示すことに。

一放流は、富田流小太刀の創始者にして、稀代の名人富田越後守の高弟富田一放が編み出したもの。聡四郎は、富田一放の継承者入江一無の孫にあたる入江無手斎に剣を学ぶ。

その特徴は次のように描かれている。

 太刀技でありながら小太刀の特徴を受けつぎ、他流にくらべて間合いが近い。人を殺すことが手柄であった戦国にあみだされた一放流は、鎧武者を一撃で昏倒させるため、太刀行きの疾さと重さを信条としていた。

 聡四郎は太刀を右肩にかついだ。腰と膝を曲げ、背中を少しそりかえした。お腹を突き出すぶかっこうなかたちだが、ここから必殺の一刀が出る。

(『秋霜の撃』P42より)

元禄の太平の世にありながら、戦国の志を失わない、凄味のある聡四郎のチャンバラシーンは、このシリーズの魅力の一つになっている。

富田一放が登場する時代小説には、戸部新十郎さんの『幻剣 蜻蛉』がある。

幻剣蜻蛉 (祥伝社文庫)

幻剣蜻蛉 (祥伝社文庫)