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一万両の懸賞金が掛けられた音無黙兵衛

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鈴木英治さんの『無言殺剣 首代一万両』を読んだ。言葉を発しない謎の浪人・音無黙兵衛が活躍する「無言殺剣」シリーズの第三弾である。

第一作『大名討ち』で、藩の剣術指南役を倒し、老中の座を狙う譜代大名久世豊広を殺して、その凄腕ぶりを強烈にアピールした音無黙兵衛。大名殺しの依頼者、古河藩の寺社奉行井上収二郎は藩主土井利直に黙兵衛の口封じを命じられるが逆に討たれることになる……。

第二作『火縄の寺』では、収二郎の家臣と妻のおひさが、黙兵衛を仇と狙うが、返り討ちにあってしまう……。

そして本作。殺しは連鎖する。一人娘のおひさを殺された古河の豪商・千宏屋河右衛門は、黙兵衛の首に一万両の懸賞金を掛けて、殺し屋を募った……。

出来事だけを追うと、何とも殺伐とした物語になってしまうが、実はこの本の魅力は、圧倒的なチャンバラシーンやハラハラドキドキのストーリー展開ばかりでない。黙兵衛の通訳役を務める相棒として、古河のやくざの三男坊伊之助が登場する。この若者の純朴さと黙兵衛の信頼感、家族への愛情などの普通っぽさが快いアクセントになっている。伊之助の成長ぶり、淡い恋心が作品にホッとする部分を作っている。

さて、今回は、黙兵衛の前に立ちはだかる強敵・荒垣外記やその部下で忍びの博造についてもしっかり描かれていて、シリーズのファンとしてはうれしいところ。少しずつ明らかになっていく黙兵衛の秘密。百鬼丸さんの表紙の立体切り絵とともに今後の展開が気になる。