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江戸の花火と鍵屋、玉屋

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山内美樹子さんの『十六夜華泥棒』は江戸情緒を感じさせる捕物小説。読んでいたら、江戸の花火について解説されていた箇所があり、興味深かった。

江戸の花火師鍵屋の初代弥兵衛は、大和国篠原村の出身で伊賀忍者の火術の遣い手で、江戸にやってきて自分の技で、花火の工夫をした。葦の管の中に丸めた火薬を詰めて、玩具花火をこしらえた。日本橋横山町に店を構え、信仰していた鍵屋稲荷にちなんで「鍵屋」という屋号をつけた。

のちに、鍵屋から分かれた一郎兵衛(または市兵衛)は、両国広小路吉川町に「玉屋」を構えた。「鍵屋、玉屋」の二大花火師時代となる。しかし、玉屋は天保十四年(1843)に失火し、闕所(財産没収)、江戸お構い(追放)となった。

ちなみに、江戸時代の花火は、黒色花火で酸化剤に硝石を使うため、爆発した時の温度がせいぜい1,700℃どまりで、花火の色は木炭の燃える色、オレンジ色1色だったという。それでも電灯のなかった時代、月のない夜は本当に真っ暗だったので、オレンジ色でもかなり鮮やかにみえたことだろう。

江戸の花火といえば、北原亞以子さんの『深川澪通り木戸番小屋』に収録された、花火にはまってしまった男の話が思い出される。

深川澪通り木戸番小屋 (講談社文庫)

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