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岩井三四二さんと室町時代小説

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なぜか、室町時代を舞台にした時代小説に惹かれる。とくに籤引きで選ばれた六代将軍・足利義教の時代は気になる。岩井三四二さんの『月ノ浦惣庄公事置書(つきのうらそうしょうくじのおきがき)』は、正長元年(1428)十一月、ちょうど義教が籤引きで将軍に選ばれた年から物語は始まる。

この『月ノ浦惣庄公事置書』は、第十回松本清張賞受賞作品でもある。文庫本の巻末に掲載された、文芸評論家の縄田一男さんの解説によると、岩井さんは「公募小説四冠王!」だそうだ。松本清張賞のほかに、『村を助くは誰ぞ』で第二十八回歴史文学賞を受賞し、「一所懸命」で第六十四回小説現代新人賞を、『簒奪者』で第五回歴史群像大賞を受賞されている。

ここまで岩井さんは、室町中期から戦国初期を中心に、作品をリリースしている。歴史小説の舞台は戦国時代が多く、時代小説は江戸時代が圧倒的に多いことを考えると、室町中期というのは、まだ掘りつくされていない金鉱なのかもしれない。

しかし、その反面、著名な人物や事件が少なく、世の中が比較的落ち着いていたので、題材として難しく描くことに相当な筆力がいることになる。事実、岩井さんは、この作品で、琵琶湖に面した名もない村の土地争いをめぐる民事訴訟という、恐ろしく地味な題材を取り上げて、一級の時代小説を紡ぎ出していることで、高く評価されている。

珍しく単行本刊行時(2003年6月ごろ)に一度読んでいて、今回文庫本刊行を機に再読することになる。

村を助くは誰ぞ

村を助くは誰ぞ

簒奪者 (歴史群像新書)

簒奪者 (歴史群像新書)