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紀州犬と狆と唐犬

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阿部牧郎さんの『艶女犬草紙』はタイトルや表紙の画でわかるように、犬を飼う若い女がヒロイン役で登場する。町之介は、紀州犬のキヨヒメとその子どもたち四匹を飼う下宿(したやど)森田屋の女将リサに一目ぼれする。そして、リサに気に入られようという下心からキヨヒメの子どもサスケを飼うことになる…。

町之介の母・徳江は写本に精を出しすぎたせいで、昨年秋ごろから視力が落ちてそのうちに失明してしまった。盲目になり店番も家事もできなくなり、すっかり元気をなくしていた徳江だったが、サスケを風呂屋通いの案内犬に仕込むことで、生き甲斐を見つけた。

この本を読んでいると、犬がいる生活はいいなあと思ってしまう。町之介は貸本の営業のかたわら、犬の口入屋という新しい仕事もはじめ、物語の中でいろいろな犬が出てくる。紀州犬をはじめ、雑種、柴犬、狆(ちん)、土佐犬、唐犬(とうけん)など。

唐犬とは、戦国時代、南蛮貿易がさかんになるにつれて日本へ持ち込まれた外国犬の総称。現在でいうマスチフ(マスティフ、Mastiff)と呼ばれる犬種の大型犬が多かったという。

江戸時代、将軍も大名も競ってオランダ商館へ大型の唐犬の注文をし、猪や鹿の狩に用いた。大名間などで贈答用に使われたりして、高価で商人でも分限者でないと唐犬は飼えなかったようだ。

ワールドドッグ図鑑◆マスチフ

http://www.dogfan.jp/zukan/Working/Mastiff/index.html

紀州犬の実物は見たことがなかったが、「天然記念物紀州犬 赤蔵荘」というサイトで見ると、白くて体毛がもこもこしてとてもかわいい。澤田ふじ子さんの『足引き寺閻魔帳』にも豪という名の紀州犬が出てくる。紀州犬は昭和九年に天然記念物に指定されたが、江戸時代は珍しくなかったのだろうか。

艶女犬草紙 (講談社文庫)

艶女犬草紙 (講談社文庫)

足引き寺閻魔帳 (徳間文庫)