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剣客の業を感じさせる剣豪小説

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荒崎一海さんの『闇を斬る 四神跳梁』を読了。主人公の鷹森真九郎は、今治藩を脱藩して、妻の雪江とともに江戸に暮らしている。直心影流十二代目の団野源之進道場で師範代を務め、師の代稽古として柳河藩江戸屋敷に通うことで、生計を立てていた。

霊岸島一の大店、和泉屋の主、宗右衛門の命を助けたことから、謎の徒党、「闇」から命を狙われ、次々と刺客を送られることになる。今治藩で目付をしていた真九郎は、持ち前の剣の腕と推理力を生かして、北町奉行所定町廻り同心桜井琢馬や岡っ引きの藤二郎らと協力して、江戸の町を震撼させる「闇」に敢然と立ち向かう。

このシリーズの魅力は、何といっても真九郎の剣さばきである。天性の疾さを備えた剣に加えて、故郷の師竹田作之丞ゆずりの秘剣・弧乱の剣と、本作品では「霧月(むげつ)」という新技を見せてくれる。

真九郎に向かっていく刺客は、金目当てで用心棒崩れや盗賊など悪行にどっぷり染まった者ばかりでなく、浮世の義理や剣客の意地からやむなく剣をとる者も少なくない。真九郎が一作当たりに斬る者の数はハンパではないが、自身も立ち合いの都度、小さな傷を負うと同時に、心に大きな鬱屈を抱えていく。強いだけのスーパーヒーローとは違い魅力を感じる、今後のシリーズの展開がますます気になるところだ。

四神跳梁―闇を斬る (徳間文庫)

四神跳梁―闇を斬る (徳間文庫)