神田堀八つ下がり―河岸の夕映え(2)

宇江佐真理さんの『神田堀八つ下がり―河岸の夕映え (徳間文庫)』を気持ちよく読み終えた。前作『おちゃっぴい―江戸前浮世気質 (徳間文庫)』に続く、江戸の市井をテーマにしたコンセプチュアルな短篇集。一話一話の登場人物たちは関係しないが、江戸の町のどこかで、同じ空気を吸っているという感じが伝わってくる。

火事で焼け出され、父を亡くして御厩河岸に越してきた水菓子屋の娘ちえ。大店暮らしとは打って変わった日々の折々に、大川の流れを見つめる。江戸の娘の恋と人情を描いた巻頭の一作「どやの嬶 御厩河岸」から読み手を捉えて離さない。端唄好きの小普請組の武士の都々逸をめぐる一篇「浮かれ節 竈河岸」、下っ引きが河岸で拾った少女の正体を探る捕物仕立ての「身は姫じゃ 佐久間河岸」、津軽藩出身の兄弟の江戸での暮らしを描く「百舌 本所・一ツ目河岸」、勘当された若旦那と居酒屋の酌婦の恋を描く「愛想づかし 行徳河岸」、自分に厳しさを科した板前と旗本の部屋住みの意気地を取り上げた「神田堀八つ下がり 浜町河岸」、バラエティに富んだ筋立てで、ほんわかした人情が味わえる小粋な作品集だ。

この作品集で第百二十九回直木賞の候補になっている。ちなみに受賞作は、石田衣良さんの『4TEEN』と村山由佳さんの『星々の舟 Voyage Through Stars』だった。

おちゃっぴい―江戸前浮世気質 (徳間文庫)

おちゃっぴい―江戸前浮世気質 (徳間文庫)