髭麻呂 王朝捕物控え(3)

諸田玲子さんの『髭麻呂 王朝捕物控え (集英社文庫)』を読み終える。主人公の髭麻呂こと藤原資麻呂(ふじわらのすけまろ)は、検非違使庁(けびいしちょう)に勤める看督長(かどのおさ)という下位の官人、今でいう警察の刑事といったところ。

血を見ただけで卒倒しかねない優男だが、少しでも強面に見せようと頬髭を生やしている。ごわごわ髭のせいで、二十四という年齢より五つ六つ年長に見える。梓女(あずさめ)という恋人に頭が上らないというちょっと情けないキャラクターだが、とにかくやさしく心栄えが素直。盗賊追捕の役を負っている職務を考えると、その性格も考え物ではあるが…。従者はかつて野犬に食われそうになっていたところを助けた雀丸という少年。

物語は、髭麻呂が都を騒がせる蹴速丸(けはやまる=名前が蹴鞠の名手を想起させてかっこいい)という盗賊を追いかける連作形式の捕物小説。解説で作家の鈴木輝一郎さんが指摘したように、「ルパン三世」と銭形警部の関係みたいに、毎回、蹴速丸に翻弄されながらも、その人間性に触れて次第に相手をリスペクトしていく展開と明朗でユーモアのあるタッチで読み味がいい。何ともチャーミングな平安朝ミステリーだ。ぜひ、続編が読みたい。