安政五年の大脱走(3)

第72回日本ダービーは、史上もっとも支持された一番人気のディープインパクトが衝撃的な強さを印象付けて優勝した。無敗の一番人気ながら2400mを堂々と逃げ切ったミホノブルボンや三冠馬ナリタブライアンに匹敵する強いレース振りで感動した。

本日、五十嵐貴久さんの『安政五年の大脱走 (幻冬舎文庫)』を読了した。時代小説は初めてで、主に現代的なエンターテインメント小説で活躍しているということもあり、スピード感があって現代風の読み味のよい作品だった。

物語は、大老井伊直弼が無理やり謀反の嫌疑をかけて、南津和野藩士五十一人と姫・美雪を、脱出不可能な山頂に幽閉したことから始まる。直弼の懐刀の長野主膳の鬼謀で、四方を切り立った崖に囲まれたすり鉢状の山頂に囚われ、唯一の出口に通じる道は竹矢来で阻まれ、その向こうには鉄砲を持った彦根藩士が見張っている。絶望的なシチュエーションで、姫と藩士たちはいかにして大脱走を図るのか…。

南津和野藩の人たちの脱出までのドラマが圧巻。とくに極限状態に置かれた藩士たちの生き様が感動的であり、時代小説畑の人では想定外のストーリー展開にディープなインパクトを覚えた。五十嵐さんにはぜひまた時代小説を書いてほしいと願ってやまない。