宗旦狐―茶湯にかかわる十二の短編(3)

宗旦狐―茶湯にかかわる十二の短篇 (徳間文庫)』に収録された、「大盗の籠」を読んでいたら、江戸中期に、東海道筋を騒然とさせた大盗賊日本左衛門の腹心第一と言われる中村左膳が登場した。偽名で梶井宮門跡に近習として仕えたと記されている。

その中村左膳は延享三年(1746)師走に、江戸へ護送されていったが、その護送に当たったのが京西町奉行所所与力の神沢杜口(かんざわとこう・貞幹)であった。神沢は、『翁草(おきなぐさ)』二百冊に、地歴から文芸、有職故実、宗教など多岐にわたる事項を随筆風にまとめたことで知られる。京を舞台にした作品が多い、澤田作品ではたびたび触れられる人物である。大盗賊と文化人が接点があったということが興味深い。

日本左衛門は河竹黙阿弥の歌舞伎「白浪五人男」の駄右衛門として有名。日本左衛門を描いた時代小説では、鈴木輝一郎さんの『白浪五人男―徳川の埋蔵金 (双葉文庫)』(双葉文庫)がまず頭に浮かぶ。