君を乗せる舟 髪結い伊三次捕物余話(2)

君を乗せる舟―髪結い伊三次捕物余話』を読み終えた。髪結いの伊三次が活躍する人情捕物帳の最新リーズだが、今回はちょっと切なくさわやかな余韻が残った。伊三次が小者を務める北町奉行所定町廻り同心不破友之進の息子、龍之介が元服して見習い同心として出仕を始める。同じ頃、江戸の町には乱暴狼藉を繰り返す本所無頼派が出没していた…。

子どもから大人へと成長の過程にある少年、龍之介(元服後は龍之進)を中心に綴られた六編の連作は、恋、友情、将来の夢など、われわれが忘れかけていた若き頃の日々を思い起こさせる。作中で龍之進が言う台詞が泣かせる。

「あぐりさんを乗せる舟になりたかった。そうしたら、浅草まで送ってやれたから。ばかでしょう? そんなことを考えるなんて」

「君を乗せる舟」(P.300)

宇江佐真理さんには、他にも『春風ぞ吹く―代書屋五郎太参る (新潮文庫)』や『おぅねぇすてぃ (祥伝社文庫)』など、青春時代小説の傑作がある。

春風ぞ吹く―代書屋五郎太参る (新潮文庫)

春風ぞ吹く―代書屋五郎太参る (新潮文庫)