「時代小説SHOW」の管理人・理流のブログ。時代小説をテーマに雑感を綴ります。

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2019年も歴史漬け。手帳と歴史ミニ事典が一冊に

歴史手帳2019年版今年も吉川弘文館の手帳、『歴史手帳2019年版』を入手しました。

日記を兼ねたコンサイス読史備要として毎年歴史家をはじめ、教師・ジャーナリスト・作家・学生・歴史愛好者等、多数の方々が愛用。

三日坊主で日記を続けられた試しがありませんが、それでも、この数年は吉川弘文館さんの『歴史手帳』を愛用しています。

時代小説に関するメモを書く手帳として使うほかに、ちょっとした時間が空いた時に、日本史の資料や図版をパラパラと眺めるのが好きです。

世界史や日本史の年表、日本の歴代天皇、将軍、執権(鎌倉時代)、執事・管領(室町時代)、老中(江戸時代)、内閣総理大臣など為政者、全国の文化施設、国宝・史跡の一覧など資料が充実しています。時代小説を読むときにかたわらにあると、心強いです。

図版は、寺社などの建造物や仏像の各部分の名称や兜や鎧など武具の名称を掲載しています。

隅々まで目を通していれば、度量衡換算表も付いているので、「第13回江戸文化歴史検定」で出題された、

江戸時代、面積の単位には、坪・畝・反・町が使われました。では、次のうち面積がもっとも広いのは、どれでしょう?
 い)2000坪 ろ)120畝 は)8反 に)1町

という問題にも簡単に答えられたはずです。(私は答えを間違えましたが…)

『歴史手帳2019年版』|吉川弘文館

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『歴史手帳2019年版』(吉川弘文館編集部編集・吉川弘文館)

正室帰蝶の目線で、信長の天下布武と本能寺の変を描く

帰蝶諸田玲子さんの長編戦国小説、『帰蝶(きちょう)』(PHP文芸文庫)を入手しました。

夫・信長が、神をも畏れぬ所業に手を染めていく。歯止めをかけるべく、出身である美濃の家臣たちの期待を一身に背負った正室・帰蝶(濃姫)は、残虐さをあらわにしていく夫に怯えながらも織田家の奥を束ね、したたかに、たくましく生きていく。
そんな帰蝶が心を許せるのは、美濃衆と、心の友とも言えるあの男だった……。
そして起きた本能寺の変――。信長に叛旗を翻したのは、帰蝶の従兄・明智光秀。
光秀に最後の決断を促したのは、一体誰なのか。織田家の要となった帰蝶の運命はいかに。

帰蝶は、斎藤道三の娘として、織田信長に嫁いでいます。道三が嫡子義龍に殺されてからは、美濃の家臣たちで織田家の家臣となった者も少なくありません。帰蝶は濃姫(美濃の姫)といわれるよう、光秀と並んで美濃衆の拠り所であったように思われます。

帰蝶は、これまでの通説では、本能寺の変より以前に早世したか離縁されたと考えられていました。近年になって、慶長十七年(1612)に信長公夫人が78歳で亡くなったという史料が発見されたとそうです。

本書では、次第に頭角を現すとともに残虐さを増す信長に苦悩しつつ、織田家の奥を取り仕切っていく、戦国の世をしなやかに生きる帰蝶を描いています。

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『帰蝶』(諸田玲子・PHP文芸文庫)

江戸の女性記者、さつき。仕事と恋に奮闘中

絵草紙屋万葉堂 初春の雪篠綾子(しのあやこ)さんの文庫書き下ろし時代小説、『絵草紙屋万葉堂 初春の雪』(小学館文庫)を入手しました。

さつきは、二号目の瓦版(読売)に近所での窃盗事件を取り上げた。犯人が「あやかし」だという読売に対抗して真犯人が分かるように書いたため、逆恨みした犯人によって兄の喜重郎が刺されていしまう。
次の号に盗賊団「蛇の目」のことを書こうかと考え始めるさつき。しかし、同業である日吉堂の伍助と栗橋靱負からは「蛇の目のことを書くな」と言われてしまう。
その頃、さつきの親友およねは“黒鳶式部”という筆名で黄表紙作家としてデビューし、これまでの熱い胸の内を喜重郎に伝えるのだが……。

ヒロインのさつきが、経営が傾いた絵草紙屋万葉堂を立て直すために、読売(瓦版)の記事を書き始め、さまざまな事件に出合うシリーズ第2弾です。

ミステリータッチのストーリー展開に加えて、読売の書き手としてさまざまな困難にぶつかるさつきの仕事ぶりと、親友およねの兄で戯作者として活躍をする伝蔵(山東京伝)への淡い恋心が描かれています。

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『絵草紙屋万葉堂 初春の雪』(篠綾子・小学館文庫)

鹿鳴館に、高等師範学校の女生徒たちが躍動する青春小説

明治乙女物語AmazonのKindle本(電子書籍)で、「文春祭り 全点50%ポイント還元」(2018/11/8まで)が行われていたので、滝沢志郎(たきざわしろう)さんの2017年度松本清張賞受賞作、『明治乙女物語』Kindle版(文藝春秋)を入手しました。

ときは明治21年。東京・御茶ノ水の高等師範学校女子部(女高師)に通う夏と咲、2人の女学生が主人公です。いまだ男尊女卑の風潮がはびこり、「女が学問なんて」と一部からは白い目で見られつつも、彼女たちは、時に挫折を経験しながらも、溌剌と教育者への道を歩んでいました。そんな彼女たちは、鹿鳴館の舞踏会で踊り手が不足したため、招かれることになります。そこには伊藤博文枢密院議長、森有礼初代文部大臣、各国の大使など、要人が集っており、それは暴徒たちの格好の標的でもありました。彼女たちも生命の危機に晒され、そして――。

本作は、明治半ばの鹿鳴館時代の高等師範学校女子部を舞台にした時代小説です。
女生徒たちの活躍ぶりにときめきます。
森有礼、伊藤博文、唐人お吉ら、実在の人物の人物も登場するのも興味深いところです。

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『明治乙女物語』Kindle版(滝沢志郎・文藝春秋)

文春祭り 全点50%ポイント還元|amazon.co.jp

捕物作家、納言恭平さんの代表作、オンデマンド印刷で復刊

七之助捕物帖 第一巻納言恭平(なごんきょうへい)さんの代表作をオンデマンド印刷で復刊された、『七之助捕物帖 第一巻』(捕物出版)を入手しました。

納言恭平の代表作、七之助捕物帖を、77年ぶりに現代仮名遣いに改めて単行本化。
昭和15年に「ユーモアクラブ」への連載が開始された「七之助捕物帖」。その作品の水準の高さは広く認められ、著者の納言恭平は捕物作家クラブの発起人の一人ともなるが、捕物小説の単行本出版がブームとなる直前の昭和24年に逝去されたため単行本化が進まず、七之助捕物帖は納言恭平の代表的な作品と認識されながらも、その全貌は知られていなかった。

本書の主人公七之助は、江戸中の御用聞の中でも、一番の捕物名人の名を謳われた父・又五郎の株を譲られながら、まだ一度も、御用らしい御用をつとめたことがありませんでした。
又五郎が死んで責任のある身になっても乱行ぶりが改まらず道楽がやめられない体たらくぶりです。
その七之助が、巾着切り上りの乾児(こぶん)の音吉に尻を叩かれながら、捕物を始めていきます。

納言恭平さんは、昭和24年に捕物作家クラブの発起人のひとりになった、昭和の前半に活躍した時代小説家です。
と書きながらも実は、捕物出版さんからオンデマンド印刷により復刊されることを知るまで、捕物作家の納言さんのことを知りませんでした。(勉強不足で恥ずかしいばかりですが…)

ちなみに、このオンデマンド印刷版の本は、サイズはA5判です。通常の単行本は四六判なので、それよりも少し大きい判型となります。ペーパーバックの無線綴じでサイズの割に軽くて取り回しやすくて、本文の文字も大きくて読みやすく感じました。

プリント・オン・デマンドで捕物小説の名作を掘り起こす、捕物出版|時代小説SHOW

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『七之助捕物帖 第一巻』オンデマンド印刷版(納言恭平・捕物出版)

「八丁堀の鷹」と異名をもつ同心とその息子が四つの謎を解く

恋牡丹戸田義長(とだよしなが)さんの文庫書き下ろし時代小説シリーズの最新刊、『恋牡丹(こいぼたん)』(創元推理文庫)を入手しました。

北町奉行所に勤め、若き日より『八丁堀の鷹』と称される同心戸田惣左衛門と息子清之介が出合う謎の数々。
神田八軒町の長屋で絞殺されたお貞。化粧の最中の凶行で、鍋には豆腐が煮えていた。長屋の者は皆花見に出かけており……「花狂い」。
七夕の夜、吉原で用心棒を頼まれた惣左衛門の目の前で、見世の主が殺害された。衝立と惣左衛門の見張りによって密室状態だったはずなのだが……「願い笹」。
惣左衛門と清之介親子を主人公に描く、滋味溢れる時代ミステリ連作集。移りゆく江戸末期の混乱を丁寧に活写した、第27回鮎川哲也賞最終候補作。

戸田義長さんは、本作で時代小説ながら、ミステリ作家の登竜門である鮎川哲也賞の最終候補に残り、推理小説の老舗・創元推理文庫からの異例のデビューを果たしました。

下手人探し、密室の謎、不在証明崩し、隠された動機と、ミステリファンをも納得させる、四つの謎解きが楽しみです。

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『恋牡丹』(戸田義長・創元推理文庫)

「おれは取次屋」。町の衆の揉め事を体を張って解決

女敵討ち 取次屋栄三岡本さとるさんの文庫書き下ろし時代小説シリーズの最新刊、『女敵討ち(めがたきうち) 取次屋栄三』(祥伝社文庫)を入手しました。
市井人情時代小説「取次屋栄三」シリーズの第19巻です。

健やかに成長する我が子に妻久栄の笑顔。秋月栄三郎は至福の日々を送っていたが、同時に物足りないものも感じていた。こんにゃく三兄弟の悩みを解決したりはするものの、一向に釈然としない。
ある日、人格者と評判の質屋の主から妻の不義調査の依頼を受けた。そしてはたと気が付いた。おれは取次屋なんだと。意気揚々となる栄三だが、背後に闇が見え隠れして……。

主人公の栄三郎は、長年思いを通じ合っていた久栄を女房に迎え、待望の子市之助も生まれて、四十を迎えて家族をもつ喜びを感じています。

一方で、“取次屋”は、人の絆を繋ぎ、武士と町の衆の間の揉め事を取り次ぐ生業で、本来危険が伴うことであり、人助けに体を張る清々しさがあるはずだと思いいたりました。

そして、自身の幸せな生活の中で、本分を忘れていたことに気付き、気持ちも新たに質屋の主からの依頼を受けて、取次屋稼業に精を出します。

女敵討ち(めがたきうち)とは、妻が不義を働いた場合、不義の相手を討ち取ることを言います。

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『女敵討ち 取次屋栄三』(岡本さとる・祥伝社文庫)

『江戸は浅草』をUP

江戸は浅草知野みさき(ちのみさき)さんの文庫書き下ろし時代小説、『江戸は浅草』(講談社文庫)を、「時代小説SHOW」で紹介しました。

本書の主人公の真一郎は、儲からぬ矢師(武具の矢や狩猟用、神事などの矢を作る職人)をやめて、あれこれ違う仕事に手を出してみたものの、その日暮らしの江戸に見切りをつけて、生まれ故郷の常陸に寄ってから上方に行こうと考えている若者です。

ところが、故郷へ旅立つ前に立ち寄った浅草寺で掏摸に遭い、江戸は浅草に留まることになりました……。

一話完結の連作形式で真一郎を中心に長屋の面々が、町の騒動を協力して解決していく人情捕物スタイルで展開していきます。

江戸は浅草|時代小説SHOW

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『江戸は浅草』(知野みさき・講談社文庫)

江戸のインフラを造った公共事業家、河村瑞賢の波瀾の生涯を描く

江戸を造った男伊東潤さんの長編歴史時代小説、『江戸を造った男』(朝日文庫)を入手しました。

明暦の大火の折に材木買占めで財を成した商人・七兵衛(河村瑞賢)は、海運航路整備・治水・灌漑・鉱山採掘など幕府事業を手がけ、その知恵と胆力で難題を解決していく。新井白石をして「天下に並ぶものがいない富商」と唸らせた男の波瀾万丈の生涯を描く長編時代小説。

河村瑞賢は元和四年(一六一八)に伊勢国度会郡に生まれ、明暦の大火の際に、木曾の材木買占めて財をなした商人です。

後世には富商の面ばかりでなく、海運航路を開発したり、大坂淀川治水工事などを指揮した、公共事業家として、江戸のインフラを造り、二百年以上に及ぶ繁栄を導いた人物としても知られています。

今年は生誕四百年にあたります。あらためて瑞賢の事績と人物像に迫ってみたいと思います。

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『江戸を造った男』(伊東潤・朝日文庫)

『大和維新』をUP

大和維新植松三十里(うえまつみどり)さんの近代時代小説、『大和維新』(新潮社)を、「時代小説SHOW」で紹介しました。

本書は、堺県議のち大阪府議を務めながら私財を投じて、故郷・奈良県の独立(再設置)運動に尽くした、今村勤三の生涯を描いた長編小説です。

「勤、大和の誇り忘れるべからず」
幕末、天誅組に身を投じて処刑された学問の師、伴林光平の遺した言葉を胸に、堺県(後に大阪府)に吸収合併されて、一度は消滅した奈良県の独立を目指して、明治政府に立ち向かった男、今村勤三に光を当てています。

刀も鉄砲も使わずに、権力に屈せず、幾多の障害を乗り越えて、粘り強く独立運動を続ける男の物語に胸が熱くなります。

大和維新|時代小説SHOW

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『大和維新』(植松三十里・新潮社)